ドイツ・ボンで開かれている国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は5日午後10時(日本時間)から、日本が推薦する「明治日本の産業革命遺産」(福岡、長崎など8県の23施設)の世界文化遺産登録の審議を始める。
当初の審議は4日の予定だったが、韓国の委員会での発言について日韓両国の意見が一致せず、5日に先送りされた。登録が決まれば「富士山」(山梨、静岡県)、「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県)に続き3年連続となり、国内の世界遺産は19件になる。
登録を巡っては、韓国が7施設について戦時中に朝鮮半島出身者が徴用されたとして反対を表明したが、6月の日韓外相会談で両国の推薦案件が登録されるよう協力することで合意した。
しかし、韓国の世界遺産委員会での発言について、日本が徴用の歴史が強調されることを懸念し、内容の擦り合わせを求めたのに対し、韓国が自由な発言を制限していると反発した。日本は徴用の歴史を否定する立場は取っていないが、「遺産登録の対象は幕末から明治で、徴用の時代とは異なる」として各国に理解を求めている。
産業革命遺産は福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、山口、岩手、静岡の8県11市の23施設で構成。幕末から明治時代にかけて日本が重工業分野で産業国家に発展した道筋を伝え、全体として1つの普遍的な価値を持つとしている。
官営八幡製鉄所(現・新日鉄住金八幡製鉄所、北九州市)や三菱長崎造船所(長崎市)など稼働中の施設に加え、「軍艦島」として知られる端島炭坑(長崎市)、三池炭鉱(福岡県大牟田市、熊本県荒尾市)なども含まれる。ユネスコの諮問機関は5月、「西洋から非西洋国家に初めて産業化の広がりが成功したことを示す」として登録を勧告した。