東京電力福島第1原子力発電所事故の避難指示が5日午前0時に解除された福島県楢葉町で同日、復興祈念式典が開かれた。松本幸英町長はあいさつで「避難地域の自治体の道しるべとなるよう、必ず復興を実現させる」と述べた。会場の町立こども園の園庭では記念植樹が行われた。
避難指示解除を記念し、植樹したエノキに水やりをする子どもたち(5日午前、福島県楢葉町)=写真 湯沢華織
いわき市の仮設校舎に通う町立小学校4年の立花克磨君(10)は式典で作文を披露。「今日は僕にとって、とってもうれしい日。大好きな自分の家に帰って住むことができる。広い家で犬を飼いたい」と読み上げた。町内の小中学校は再開していないため、週末だけ自宅に戻るという。
式典後、取材に応じた松本町長は若い世代を中心に帰還をためらう町民が多いことや、除染作業が一巡した後も残る高線量地点への対処などを課題に挙げ「町民と一緒に前に進んでいかなくてはならない」と話した。
町役場は事故後、多くの町民が避難したいわき市に機能を移していたが、昨年6月から「帰町準備室」として町内の本庁舎で業務を再開。5日は同室の看板を取り外し、本来の町役場として再スタートした。この日は町の駐在所も再開。福島県警双葉署の特別警戒隊がパトロールをした。
町内では除染で出た廃棄物が仮置き場に積み上がり、住民の避難中に傷んだ箇所の改修が終わっていない民家も多い。5日午前には自宅の草むしりなどに汗を流す住民の姿も見られた。
楢葉町は2011年3月11日の事故発生後、ほぼ全域が福島第1原発から20キロ圏内の警戒区域となった。2012年に避難指示解除準備区域に移行。原則宿泊はできないが、日中の自宅への立ち入りは自由になった。今年4月からは避難指示の解除に向け、住民が夜間も滞在できる準備宿泊が始まった。
楢葉町の解除前の時点で、福島県では県内外に約10万7千人が避難している。