【ベルリン=赤川省吾】シリアなどから押しよせる難民や移民の流入が拡大するなか、欧州連合(EU)各国の対応に動きが出始めた。ドイツでは13日、オーストリアとの国境で入国審査を導入。チェコも国境警備に乗り出した。EUは14日に臨時内務・法務相理事会を開き、欧州委員会が提案した各国の受け入れ分担を協議する予定だ。
ドイツ政府が今回の入国審査の導入については「暫定措置」と説明している。「ヒト・モノ・カネ」の自由な移動を目指した欧州統合の精神に反したものではないと強調するが、あまりの難民の多さに「移動の自由」が揺らいでいる。
ドイツ南部の中心都市ミュンヘンは12日の1日だけで1万3000人の難民を受け入れた。宿泊施設は満室で支援が追いつかない状況になりつつある。流入ペースを抑えるのが最大の狙いだ。
14日に開かれるEUの臨時内務・法務相理事会でドイツは欧州各国が平等に難民を引き受けるように迫る見通しだ。
ドイツが難民の流入を制限したことで周辺国にも影響が出ている。オーストリア連邦鉄道は引き続きハンガリーとの列車を運休し、切符の販売も取りやめた。報道によると、ハンガリーの警察当局は13日までに、不法入国した難民ら約4300人を拘束したという。チェコは難民が自国領を通ってドイツに向かうのを警戒し、国境地域の警備を強化している。
一方、欧州の主要都市では難民受け入れを訴える大規模なデモが行われた。ロンドンでは数万人がデモに参加し、プラカードなどでキャメロン政権への批判を展開。また、デンマークの首都コペンハーゲンでも数万人が参加し難民との連携を訴えた。ただ、難民受け入れに消極的な東欧諸国では難民受け入れに反対するグループによるデモも行われた。