東日本大震災の津波で被害を受けた岩手、宮城、福島3県の沿岸と原子力発電所事故の避難区域となった計43市区町村で、震災前にあった計2007診療所の13%に当たる267施設が休止もしくは廃止したことが14日までに、3県や保健所への取材で分かった。
3県によると、震災による建物被害や医師の死亡、避難による患者減などが主な理由という。被災地では災害公営住宅の建設などで生活再建が進んでいるが、地域医療は大きく損なわれており、今後復興の足かせとなる恐れもある。
43市区町村は岩手12、宮城16、福島15。震災後から今年7~8月までに、保健所に休止あるいは廃止届を提出した医科と歯科の診療所の合計を調べた。仙台市は沿岸2区のみ集計した。
県別では、福島県が192施設と最多で、震災前にあった701診療所の27%に当たる。
原発事故後に避難指示区域が設定された11市町村では計99施設。この地区の大半を管轄する福島県相双保健所は「帰還が進めば現地再建したいという医師もいる。人口減が確実な中、どの程度再開するか不透明」と話す。
岩手県では、震災前の221診療所の10%に当たる22施設、宮城県では1085診療所の5%の53施設がそれぞれ休廃止した。避難指示区域を除き、休廃止した割合が大きかったのは、津波で壊滅的な打撃を受けた大槌町で38%に上った。
被災地医療に詳しい東北大の石井正教授は「医療インフラの回復は復興の大前提だが、人口減で診療所経営は厳しい。医師個人の志に委ねるのは限界があり、拠点病院との連携体制づくりなど行政によるサポートが不可欠だ」と話している。〔共同〕