【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)が「難民危機」への対応を急いでいる。22日にブリュッセルで開いた臨時の閣僚理事会ではシリア難民ら12万人の受け入れ分担の義務化の再協議に入った。23日に開く臨時首脳会議では難民発生の根本原因である中東や北アフリカの政情安定化に向けた外交戦略などを協議する方針だ。難民受け入れを巡って亀裂が目立つ欧州の結束が問われている。
オーストリア警察によると、21日だけでハンガリーとの国境から入国した難民らは1万人近くに上った。欧州に押し寄せる難民の流れは止まっていない。
「ハンガリーは不法移民を許さない」。ハンガリー政府は21日、多くのシリア難民らが滞留するレバノンで発行される新聞に“受け入れ拒否”の広告を掲載。国境管理のために難民らへ催涙ガスなどの武器使用も軍に認めるなど、流入阻止へ強硬姿勢を強めている。難民対策を巡る欧州の足並みが乱れている。
EUは22日、臨時の内相・法相理事会を開いた。12万人の難民受け入れの加盟国による分担案を再協議する。開幕に先立ち、EUで難民問題を担うアブラモプロス欧州委員は記者団に「責任と連帯について語るべきときだ」と訴えた。分担案は14日の臨時理事会でも協議したが合意できなかった。分担の義務付けを巡って、ハンガリーやチェコなど中東欧諸国が反発しているためだ。
21日には内相・法相理事会の議長国のルクセンブルクが中東欧諸国とプラハで会合し、歩み寄りを求めたが不調に終わった。22日の合意にも不透明感が漂う。12万人の難民分担案は加盟国の多数決で決められる仕組み。ドイツなどからは多数決を求める声も上がる。
ハンガリーなど中東欧諸国で反発が根強いのは、国内政治や国民感情の影響が大きい。ハンガリーのオルバン首相は21日の議会演説で「移民がハンガリーを席巻しようとしている」と訴えた。
同首相は強権的な政治手法で知られ、難民問題ではEUに対峙する姿勢を強調して国民の支持を得ようとの狙いもにじむ。1980年代まで社会主義体制だった影響で国民意識のグローバル化が遅れ、イスラム教など異文化への抵抗感もなお根強いことが背景にある。
EUはさらに23日、臨時の非公式首脳会議も開く。EUの足並みが乱れている受け入れ分担の協議は22日に決着させて、首脳会議ではより中長期的、根本的な課題に取り組みたい考えだが、分担協議がもつれ込む可能性もありそうだ。
EUのトゥスク大統領は18日、各国首脳らへ首脳会議の開催を知らせる手紙で(1)ギリシャやハンガリー、イタリアなど難民流入の「最前線」の加盟国への支援策(2)トルコなどシリア周辺国との連携策(3)シリア危機の解消に向けた外交努力――などの早急な協議が必要だと訴えた。