エコノミストの3分の2近くは米連邦準備理事会(FRB)が年内に利上げに踏み切ると予想している。経済データの悪化でFRBのインフレ目標の達成が危ぶまれると一部の銀行が警告しているにもかかわらずだ。
ロサンゼルス市が開催した就職フェアで配られた求人情報。米新規雇用者数と賃金の伸び悩みが明白になり、年内利上げの観測は後退していた=ロイター
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の調査で欧米とアジアの主要銀行のエコノミスト46人のうち65%が、FRBは12月の会合で政策金利のフェデラルファンド金利(FF金利)を引き上げるだろうと答えた。
この見解は、来年まで金融引き締め政策はないだろうと高をくくっていた市場の予想に反する。FRB高官は最近、金融引き締めは時期尚早だと警告していた。
エコノミストの半数以上がFRBは今年政策ミスのリスクを冒すと予想している。だが、そのミスが利上げを早めることなのか、遅らせることなのかについては意見が割れている。その何人かは、小売り販売や工業生産、地域の製造業リポートなどの経済データの悪化とインフレの兆しがないことが利上げの先送りを後押ししていると述べた。
レイモンド・ジェームスのエコノミスト、スコット・ブラウン氏は「FRBは常に政策ミスを冒すリスクを取る。それが何をもたらすか否かにかかわらず」と話す。「だが、ここでいうリスクは対称ではない。つまり、時期尚早な利上げが行われれば、針路の修正は難しくなるということだ」
■意見の相違、市場を不安に
10月28日の会合後の利上げを予想すると回答したエコノミストはいなかった。その会合後には今のところ記者会見は予定されていない。85%以上がFRBは来年6月の会合後までに利上げを2回行うと予想している。
FRBで意見が分かれていることは市場を不安にさせている。十数名を超すエコノミストはメッセージが「ある程度」あるいは「非常に不透明だ」と述べている。
きっかけをつくることに慎重なFRBの政策決定者らは、金利を金融危機以来の最低に近い水準で維持したが、それが市場を戸惑わせ、9月の市場変動をあおる結果となった。利上げの先送り判断により世界経済減速への懸念が鮮明になったと投資家の多くが話した。
9月の決定の前は、FTの調査に応じたエコノミスト10人中9人がFRBは年末までにゼロ金利政策を終えると予測していた。
FRB高官は、米ドルが堅調であることと金融市場の変動が利上げと同様の役割を果たしたことを認め、さらなる引き締めは米国の景気回復の妨げになると警告した。
スタンダードチャータードのトーマス・コスターグ氏は「12月が利上げの最後のチャンスだ。FRBは今、動かなければならない」と警告した。
By Eric Platt
(2015年10月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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