東京電力は26日、福島第1原子力発電所で放射性物質を含む地下水が海に流れ出るのを防ぐため護岸付近に整備していた「海側遮水壁」が完成したと発表した。東電によると汚染地下水の流出量は1日あたり約400トンから10トン程度に減少する見通しだ。
護岸に沿うように鋼管を打ち込み、汚染地下水の流出を防ぐ(東電提供、撮影は9月)
福島第1原発では事故で放射性物質が飛び散った敷地内を大量の地下水が流れ、港湾に流出している。これまで港湾部から外洋への汚染拡大を防ぐ水中フェンスなどを設置していたが、より根本的に海への地下水流出を断つ手段として海側遮水壁の整備を進めてきた。
海側遮水壁は全長780メートル。護岸に沿って約600本の鋼管を垂直に打ち込んで並べ、壁を形成した。工事は2012年に始まったが、完全に壁を閉じてしまうと、せき止められた地下水が敷地内であふれかえる可能性があるため、13年末に壁の一部を開けたまま工事を中断するなどし、長期化していた。
福島第1原発では今年9月以降、建屋の近くの「サブドレン」と呼ばれる井戸などから地下水をくみ上げる対策を始めた。これにより、敷地内の地下水位を調整しやすくなったことで、海側遮水壁を完全に閉じることが可能になった。港湾への汚染地下水の流出を巡っては、風評被害を懸念する漁業関係者らも早期の対策を求めていた。
ただし、海側遮水壁ができても放射性物質を含む水の流出はゼロにはならず、汚染した雨水が海に流れることを防ぐのは難しい。