トヨタ自動車(7203)の豊田章男社長は6日、人工知能(AI)技術の研究・開発の新会社設立を受けた記者会見を都内で開き「モビリティー(移動手段)の枠を超えて社会を豊かにしたい」と抱負を語った。将来的に自動運転や高度安全運転技術に加え高齢者向けロボット分野など自動車事業以外の事業拡大を模索する意志も明らかにした。
トヨタは2016年1月に米国カリフォルニア州に「トヨタ リサーチ インスティチュート(TRI)」を設立する。トヨタはTRIに16年から5年で10億ドル(約1200億円)を投資する。最高経営責任者(CEO)には米国防総省が主催する災害対応ロボット競技の運営に携わった著名ロボット研究者のギル・プラット氏を起用し、社員数は200人程度を見込む。
豊田社長は「障害者など多様な人にクルマの楽しさを伝えるために自動運転車は我々の想像以上の力がある」とし、関連の基礎技術に欠かせないAIの開発の重要性を強調。あわせて「AIとビッグデータを結びつけることで自動車を超えた産業を創出できる」と今後の事業領域の拡大も視野に入れていることを示唆した。
会見に同席したプラット氏はTRIでの開発のポイントについて「安全」、「アクセスビリティ(だれでも利用できる)」、「ロボット」の3点を挙げた。自動車分野に限らず、生産管理から高齢者向けの介護ロボットまで幅広い分野でのイノベーション研究を目指す方針を示した。プラット氏は「トヨタが10年間で販売してきた自動車1億台の走行データ、環境データ、運転者のデータを社会に生かす」と話した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕