宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9日、金星探査機「あかつき」が金星を回る軌道への投入に成功したと発表した。7日に軌道投入に再挑戦して計画通りにエンジンを噴射したが、観測に適した軌道に入れたかどうかはわかっていなかった。日本の探査機が地球以外の惑星の周回軌道に入るのは初めて。2年間かけて金星の大気の様子などを観測する。
金星探査機「あかつき」の周回軌道投入が成功したことについて、記者会見するJAXAの中村正人プロジェクトマネージャ(9日午後、相模原市中央区)
あかつきはすでに一部の観測を始めており、JAXAは初めて撮影した画像の分析を進めている。計画責任者の中村正人プロジェクトマネージャは「かなりきれいな画像だ。金星に到着したという実感がわいた。今後の観測に期待が持てる」と語った。再挑戦するための軌道計算を担当した広瀬史子主任研究員は「まん中にきれいな金星の画像が写っていてほっとした」と笑った。
金星探査機「あかつき」は2010年12月に主力エンジンのトラブルで周回軌道への投入に失敗した。JAXAは7日に姿勢制御用のエンジン4基を20分あまり噴射させ、予定していた周回軌道に入ったかどうか分析を進めていた。
金星は地球と質量や大きさが似ていて「双子星」と呼ばれるが、環境は大きな違いがある。上空は風速100メートルの猛烈な風が吹いていて、硫酸の雲で覆われている。大気のほとんどが二酸化炭素(CO2)で、温室効果で地表付近の気温は約460度にもなる。「あかつき」はこの金星の気候の謎に迫る観測に取り組む。