2015年にエボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)の流行が相次いだことを受け、世界保健機関(WHO)はこのほど、近い将来に流行し多くの人命を奪う恐れのある「危険な感染症リスト」を公表し、各国に警戒を呼び掛けた。エボラ熱の対応が遅すぎると批判を受けたWHOは、早めの対策で「次のエボラ熱」の流行を防ぎたい考えだ。
リストに挙がったのはエボラ熱とMERSのほかクリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病、ラッサ熱、新型肺炎(SARS)、ニパウイルス感染症、リフトバレー熱。
これらの病気は現在、有効な治療法がほとんど確立されていない。エボラ熱やMERSが流行した際にもワクチンなどが開発されておらず多くの死者を出した教訓から、WHOはこれらの病気の治療法など研究開発が急務だと警告している。
リストは今月、科学者や公衆衛生の専門家らがジュネーブに集まって選定した。今後、毎年見直される予定という。
クリミア・コンゴ出血熱とマールブルグ病、ラッサ熱はエボラ熱と同じウイルス性出血熱で死亡率が高い。SARSはMERSを引き起こすウイルスと同じ仲間であるコロナウイルスによる感染症。ニパウイルス感染症は1990年代末にマレーシアに出現。リフトバレー熱は蚊を介して羊などの家畜から人間に感染するウイルス性の熱病。
WHOはほかにチクングニア熱、マダニが媒介するウイルス性感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」、ジカ熱も深刻だとして、研究開発が急がれると指摘した。
(ジュネーブ=共同)