関西経済同友会は12日、5月で任期満了となる村尾和俊代表幹事(NTT西日本社長、63)の後任に鈴木博之常任幹事(丸一鋼管会長、69)が昇格する人事を内定したと発表した。丸一鋼管から地元経済団体のトップに就任するのは初めて。代表幹事は慣例で2年務めることになっており、鈴木氏は蔭山秀一代表幹事(三井住友銀行副会長、59)とペアを組み、地盤沈下が続く関西経済の活性化に取り組む。
5月の通常会員総会後の理事会で正式に決まる。鈴木氏は2009年に常任幹事に就任し「中堅企業委員会」などの委員長を歴任。記者会見した鈴木氏は「回復基調にある関西経済のなかで、まだ光が当たっていない中小や地方の企業をもり立てていきたい」と抱負を述べた。
企業が加盟する関西経済連合会や大阪商工会議所と異なり、同友会は経営者など個人会員で構成する。この特徴を生かそうと、鈴木氏は「関西経済同友会の未来を考える委員会」の委員長を務めた際に、同友会は他の経済団体とは異なる活動をすべきだとする意見書をまとめた。村尾氏は「会員の生の声を拾い上げ、進むべき道を示してくれた」と評価する。
匠(たくみ)の技術が失われているという問題意識から、村尾氏肝煎りで14年に「日本の豊かな精神文化委員会」を立ち上げたが、その委員長には鈴木氏が就任。リニア中央新幹線の大阪同時開業など、交通インフラの早期整備を求める「関西広域インフラ・うめきた委員会」の委員長も村尾氏が鈴木氏に要請した。村尾氏は「同友会活動の中軸を担っていただいた」と、今後もその手腕に期待を寄せる。
もっとも人選は難航を極めた。後任人事は例年12月には内定するが、越年する異例の事態となった。村尾氏は大阪の基幹産業である製造業と大阪に本拠を置く企業の出身者を条件に人選を進めたが、鈴木氏に行き着くまでに十河政則常任幹事(ダイキン工業社長)には固辞された。年が明けて鈴木氏に要請し、先週後半になって内諾を得た。
政府などに要望活動をする際、関西の経済界は大阪や京都、神戸でばらばらだと指摘されてきた。村尾氏は政府機関の地方移転や高速道路の整備などの要望を京阪神一体で取り組んだほか、希薄となった大阪府・市との連携を模索した。鈴木氏も蔭山氏とともにこの路線を引き継ぎ、関西経済の再浮上に取り組む。