長野県軽井沢町のスキーツアーバス事故は天井への衝撃で車体がくの字に曲がったため、被害が拡大した可能性が浮上している。「今回のケースは想定外」。正面衝突や横転に備えてきたメーカーからは対策の限界を指摘する声が上がる。専門家は「バス客室の構造は弱い」として、事故を未然に防ぐ運転支援システムの導入を提案する。
事故を起こしたバスは後方の天井部分が大きくへこみ、床との間が1メートルほどしかない部分もあった。転落後に斜面の樹木に激突したとみられ、天井に体がぶつかり、死傷したケースもあるとの見方も出ている。
国土交通省によると、車体に関する安全基準はあるが、例外規定が多く大型バスは対象外。メーカーは横転に備えた車体の構造対策として欧州の基準などを採用しているのが現状だ。
三菱ふそうトラック・バスの担当者は「転倒しても生存空間を確保できる構造になっているが、天井にピンポイントで力がかかった今回のような衝突は想定を超えている」と話す。日野自動車も「屋根への落下物や局部的な衝撃は想定していない」としている。
元中日本自動車短大教授の大脇澄男氏(自動車工学)は「バスは下部の構造は強いが、その上の客室は弱い。極端に言えば、薄い板でできた箱を載せているイメージ。側面や天井からの衝突には無防備に近い」との見解を示す。
だが、燃費を良くするため車両の軽量化は必要で、特異なケースの事故対策だと費用対効果の問題もある。客室を堅固にしても衝撃が吸収できず、ダメージがより大きくなる可能性もある。
大脇氏は「車線を逸脱したときに警告するような運転支援システムを取り入れるのが現実的だ」と話した。〔共同〕