【ワシントン=共同】脊髄を損傷し、手足の動かなくなった患者が頭で思い描いた動きを装置で読み取り、手に電気信号を伝え作業できるようにすることに世界で初めて成功したと、米オハイオ州立大などのチームが13日付の英科学誌ネイチャーに発表した。
実験に参加した20代の患者、イアン・バークハートさんは5本の指を動かせるようになり、瓶をつかんで中身を別の容器に移し替えるという複雑な作業をこなした。電話による記者会見で「人に頼らず日常生活の動作ができ、希望の光が見えた。実験以外の場でも使いたい」と話した。
ただ、装置はバークハートさん専用で、広く使えるようにすることが課題となる。
通常、脳が手を動かそうと考えると電気信号となって神経細胞を伝わり、脊髄を経由して手の筋肉を動かす。事故などで脊髄を損傷するとそこで信号が途切れ、手足が動かない「四肢まひ」になることがある。
チームは脊髄損傷の患者でも脳の電気信号が手に伝わる方法を編み出した。手術で脳の表面に1.5ミリ四方の電極を埋めて信号を捉え、体外のコンピューターに送信。信号を解読し、腕の130カ所に取り付けた電極を使い、筋肉に刺激を与えて動かした。
信号の解読には人工知能(AI)の「機械学習」という手法を用い、患者がある動作をイメージした場合に、脳からどのような信号が出るかのパターンを繰り返し学び、精度を高めた。
バークハートさんは6年前に事故で首を傷め、四肢まひとなった。