フジテレビは16日、安倍晋三首相がゲスト出演するとマスコミ向けに告知していた17日のバラエティー番組「ワイドナショー」(毎週日曜午前10時)の放送を休止することを決めた。同時間帯に熊本地震の緊急報道特番を放送することにしたためという。
「ワイドナショー」はお笑い芸人の松本人志さんや東野幸治さんらが出演し、芸能ニュースや時事問題を扱うトーク番組。フジテレビによると、安倍首相が主催した「桜を見る会」のほか複数のニュースについて語りあった内容を放送する予定で、14日の地震発生前に収録されていた。収録したものを今後放送するかどうかは未定という。
同番組は、放送予定日が12日に告示された衆院北海道5区、京都3区の補選期間中だったため、投票への影響を懸念する声がメディア専門家らの間から出ていた。同局は「番組の企画意図は、世の中で起こっている様々なニュースに関して政府を代表する総理と出演者が話をするのが趣旨。補欠選挙に影響があるとは考えていない。また、フジテレビとしてはこれまでも不偏不党、公正中立な報道を行ってきたし、全ての番組についてもその方針に変わりはない」としている。
上智大学の田島泰彦教授(メディア法)は、国政選挙期間に特定の政党党首が単独で番組に出演することについて、「ふだんから首相をはじめ与党側のニュースが多く伝えられている各社の報道の全体構造を考慮すれば、選挙期間中はなおさらその差を拡大すべきではない。直接政策に触れない放送内容であったとしても、首相が出演すること自体に大きなインパクトがあり、バラエティーゆえに好感度が上がる可能性があった」と話している。(滝沢卓)