土砂崩れで阿蘇大橋(中央部分)が無くなっていた=16日午前6時1分、熊本県南阿蘇村、朝日新聞社ヘリから、高橋雄大撮影
16日午前1時25分ごろ、熊本県熊本地方を震源とする強い地震があり、熊本市や同県南阿蘇村などで震度6強を観測した。同日午前3時55分ごろにも、同県で震度6強の地震が発生。同県と大分県などで多数の住宅やアパートが倒壊し、警察などによると、同日午後1時半までに熊本県で16人の死亡が確認された。14日以降の死者は計25人となり、約900人の重軽傷者も出ている。
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気象庁によると、16日午前1時25分の地震は、阪神大震災(1995年)級の規模の推定マグニチュード(M)7・3で、震源の深さは約12キロ。同庁はこの地震を、14日に震度7を観測して以降に発生した一連の地震の「本震」とする見解を示した。震源が同じ断層帯付近で起きており、震度分布も広範囲にわたることなどが理由だという。
また気象庁は有明・八代海に一時、津波注意報を出し、すぐに解除した。
最初の震度6強の後、午前1時46分ごろと午前9時48分ごろにも震度6弱の揺れをそれぞれ観測。14日夜以降、16日正午までに、最大震度が6弱以上の地震は本震を含めて計7回発生した。
16日午前8時30分には熊本県の阿蘇山でごく小規模の噴火が発生、噴煙が火口から最大で約100メートルまで上った。同庁は「火山活動に特段の変化はない」との見解を示した。
16日に熊本県内で亡くなった16人のうち、身元が判明した15人はいずれも家屋倒壊による圧死などが原因とみられる。1人は、熊本県八代市で16日未明に起きた火災で亡くなったとみられる。
同県警の正午現在のまとめでは、110番通報は県内で、生き埋めや下敷き40件、家屋倒壊や閉じ込め118件、火災9件などがあった。同県南阿蘇村では東海大学農学部の学生らが住むアパートが倒壊した。12人が生き埋めになり、消防などが救出したが、1人が心肺停止状態。
政府のまとめでは、同県内で655カ所に約6万9千人が避難している。
南阿蘇村では、地震で阿蘇大橋(全長200メートル)が崩落。同県宇土(うと)市の市役所庁舎も損壊した。建物の半壊などの被害は大分県で14件、福岡11件、佐賀1件。
土砂崩れも多発し、南阿蘇村と熊本市方面を結ぶ国道57号などが通行止めとなっている。国土交通省によると、JR豊肥線の立野―赤水では土砂の流入でレールなどが流失したとみられ、同線は熊本―大分の全線で運休している。同線では、赤水駅付近で回送列車(2両)の脱線も起きた。
JR九州は16日の始発から九州新幹線の運転を見合わせている。
熊本空港も施設の損傷などで閉鎖されている。
九州電力によると、16日正午現在、熊本、大分、宮崎3県の約16万4千戸で停電。鹿児島県の川内原発と佐賀県の玄海原発に異常はないという。
また政府によると、熊本県を中心に、ガスは約10万5千戸、水道は約38万5千戸で使用できない。
九州地方は発達する低気圧の影響で、16日夜から雨が強まり、17日は局地的に1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨が予想されている。気象庁は、地震で地盤がゆるくなっている場所もあるため、土砂災害に警戒するよう呼びかけている。