避難所の小学校の廊下で、携帯ゲーム機で遊ぶ子どもたち=18日午前8時48分、熊本市中央区の慶徳小学校、細川卓撮影
熊本地震の被災地は18日、「本震」後初めての平日を迎えたが、県内の公立の小中高校は約7割が休校となった。新学期が始まって間もない時期。専門家は子どもの心のケアの必要を指摘する。
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「いつもと寝る場所が違うから眠れない」。熊本市立本荘小学校3年の上田朔(さく)君(8)はつぶやいた。避難所となった学校の体育館に身を寄せる。母親の茉梨花(まりか)さん(30)は「共同生活での大人のいらいらが子どもに伝わっている」と不安がる。朔君は夜中、誰かの足音を地震だと思って何度も目を覚ますという。
同様に避難中の同小6年の三浦衣織さん(11)は「嫌なのはトイレに行けないこと」と言う。母の令佳(れいか)さん(35)が「避難所の水が限られているからトイレをためらっているんだと思います」と話すと、「うん」とうなずいた。
夜になると涙目で「また大きい地震が来たらどうしよう」と令佳さんに訴えるという。令佳さんは「実は家に帰りたかったり、怖かったりすると思う。大人に遠慮しているんじゃないかな」と気遣った。
熊本県益城町の広安小学校の中庭には、タブレット端末を囲んでゲームする子どもたちがいた。小学3年の小村菜々美ちゃん(8)、兄で小学6年の海斗君(11)たちだ。
ふだん通っている学校が今は避難所。自宅が被災し、14日夜からきょうだい4人と母親の5人でここにいる。菜々美ちゃんは「持ってきた塗り絵をしたり、赤ちゃんの面倒を見たりするのが楽しい」。
同小には国際NGOが子どもたち向けの遊び場を設けた。粘土やお絵かき、ボール遊びができ、菜々美ちゃんも17日はそこで遊んだ。「遊び場があってみんなでわいわいできた」
一方で、海斗君は「余震が怖い。家に帰って普通の生活に戻りたい。学校にも行きたい」とも。菜々美ちゃんも「3年生になってすぐに地震になっちゃった。早く勉強もしたい」と話した。
益城町には五つの小学校、二つの中学校があるが、すべて22日までの休校が決まっている。小学校が避難所となり、中学校は通学路に架かる橋が通行止めになっているなど、再開のめどは立っていない。
「人目をはばからずに心を開放できる時間と空間があるかどうかが、後々の子どもの心に大きく影響する」。新潟県中越地震や東日本大震災などの際に、避難所や学校現場で子どもたちの心のケアを指導した新潟県柏崎市子育て支援センターの臨床心理士、小林東さん(49)はそう指摘する。
小林さんによると、大きな地震を経験した子は、小さな揺れでも過剰に反応したり、地震速報の音に泣き出したりするという。「できるだけ早く遊び場を確保してほしい。学校も可能な範囲で早く再開した方がいい。通常の生活と友達の中にいることで子どもは癒やされる」と話す。
■子どもの心のケアの対応例
《避難所では……》
●携帯電話の緊急地震速報の音やわずかな揺れなどに過敏に反応したり泣いたりする→抱きしめるなどスキンシップを多めにし、「大丈夫」と声をかけて安心させる。「静かに」などと叱らない
●落ち着かない様子→避難所の隅を布や段ボールで囲ったり、段ボールの中や車中で過ごしたり、落ち着ける小さな空間を確保する
●イライラしたり暴言をはいたりする→体を動かして遊べる場所をつくる(できれば屋外)
《余震が落ち着いてきたら……》
●開放感で騒ぎ出す→学校をできるだけ早く再開し、できるだけふだん通りの生活に戻す
●暴力的になったり「地震ごっこ」などを始めたりする→大きなストレスに対処しようとする反応と理解し、けがのない範囲であたたかく見守る
●テレビを見ると怖がる→報道による間接的トラウマが出るので、地震映像を繰り返し見せない
(小林東さん監修)