地震の被害を受けた熊本城。天守閣(中央上)の瓦は落ち、二つのやぐら(手前)は崩れ落ちている=16日、熊本市
熊本県を中心に九州を襲った地震は、熊本城(熊本市)をはじめ多くの歴史的建造物に深い爪痕を残した。調査が進むにつれ、新たな被害が次々と確認されている。これから始まる長い復旧・修復作業では、東日本大震災など過去の災害で蓄積されたノウハウが期待される。
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日本三名城の一角を占める特別史跡で、築城の名手・加藤清正が造った熊本城。「武者返し」で知られる強固な石垣はあちこちで崩れ、戦後復元された天守の瓦は多くが崩落した。屋根を飾った一対のしゃちほこも見あたらない。城内の国指定重要文化財(重文)の建造物も被害は甚大。天守並みの規模を持つ宇土櫓(やぐら)の壁はしっくいがはがれ、東十八間櫓と北十八間櫓は石垣ごと崩落した。雄大な約250メートルもの長塀も半分近くが倒壊した。
「予想以上……。ショックです」。熊本城顕彰会理事の富田紘一・肥後考古学会長は声を詰まらせた。市熊本城総合事務所の河田日出男所長は「壊滅的状態だ。10年か20年か、とにかく復旧に長期間を要するのは間違いない」と途方に暮れる。