生活不活発病の予防のポイント
長引く避難生活であまり動かない状態が続くと、心身の働きが衰える「生活不活発病」になるおそれがある。専門家は「お年寄りや障害がある人がそうならないよう周囲も配慮してほしい」と注意を促している。
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熊本地震 災害時の生活情報
東日本大震災でも現地の支援や調査を続けた産業技術総合研究所招聘(しょうへい)研究員の大川弥生医師によると、災害で自宅が倒壊し避難所に移ったり、自宅が無事でも家の内外で物が散乱したりして、生活環境が一変。家庭や地域での役割のほか、生きがいを失い、「すること」や外出先がなくなって、活動量が減ってしまう。
その結果、足腰が弱って心肺機能が悪化し、食欲不振や便秘のほか、認知症やうつ病のような状態になるなどして徐々に全身の心身機能が低下してしまうのが生活不活発病だ。
大川さんは新潟県中越地震などを通して地域の保健師らとお年寄りらの生活不活発病の予防や対策に取り組んできた。
災害時は「休んでいていいよ」と周囲から言われ、高齢者自身も「迷惑をかけないように」との遠慮もして動かなくなってしまう傾向があり、この病気のリスクが高まるという。「避難所だけでなく、自宅で避難生活を送っている場合も気をつける必要がある」と指摘する。
東日本大震災の1カ月後、大川さんは仙台市医師会などの協力を得て、市内4避難所で生活不活発病のチェックリストを使い、日中を避難所で過ごす65歳以上のお年寄りを対象に調査した。
震災前は元気だった102人のうち、歩行や着替えなど日常生活動作(ADL)が「難しくなった」と答えた人は64人(62%)いた。活動性との関係では、「座っていることが多い」と答えた人は49人で、悪化していた割合が多く、9割近かった。
「安全に配慮しつつ、片付けや子守などお年寄りもできる範囲で作業に加わってもらったり、杖や手押し車などを用意したりして周囲がかかわり方を工夫して、お年寄りの生活が活動的になるようにしてほしい」と大川さんは話す。(寺崎省子)