弁護団とともに裁判所に入る朴龍晧さん(左手前)=28日午前9時29分、大阪市北区、森井英二郎撮影
大阪市東住吉区の小6女児死亡火災で裁判のやり直しが決まった母親の青木恵子さん(52)と内縁の夫だった朴龍晧(ぼくたつひろ)さん(50)のうち、朴さんの再審初公判が28日、大阪地裁で始まった。検察側は有罪主張を取り下げると表明。弁護側は早期の無罪判決を求め、2人を無期懲役とする柱になった朴さんの捜査段階での自白調書などを証拠から除くよう訴えた。
西野吾一裁判長は冒頭、生命保険金を得るため2人で女児殺害を計画し、朴さんが自宅車庫にガソリンをまいて放火し、入浴中の女児を焼死させたという起訴内容に対する意見を朴さんに求めた。朴さんは「僕は放火殺人をしていません。無実です」と述べた。
次に検察側が意見を陳述。「有罪主張はしない。裁判官において、しかるべく判断していただきたい」と求めた。車庫の軽ワゴン車から漏れたガソリンが風呂の種火に引火した自然発火の可能性があるとして、大阪地裁の再審開始判断を維持した大阪高裁決定を事実上、受け入れた。
続いて弁護団が再審にあたっての詳しい意見を述べ、2人を有罪とした元の裁判で有力な証拠とされた警察・検察の自白調書を証拠としないよう請求。これらは「数々の違法な取り調べによるもの」と批判し、任意性がないと訴えた。
その後の証拠調べで、弁護側は再審開始の決め手となった燃焼実験の概要を説明。まいたガソリンは種火に引火して一気に燃え上がり、ライターで着火後、炎を跳び越えて逃げたとする朴さんの自白通りの犯行は無傷では不可能とした。さらに、真相は事故だとする立場から、同型車のガソリン漏れの事例も挙げた。
朴さんの公判は午後に被告人質問があり即日結審する。青木さんの再審公判は5月2日。火災から21年を経て、無罪判決は8月初旬に言い渡される見通しだ。(阿部峻介)
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〈東住吉再審〉 1995年7月、大阪市東住吉区の自宅風呂場で小6女児が焼死。大阪府警は保険金目的の放火殺人とみて青木さんと朴さんを逮捕。2人は捜査段階で一時「自白」をしたが公判で否認。だが、朴さんの自白調書などが重視され、2006年に最高裁で2人の無期懲役が確定した。大阪地裁は12年3月、弁護団の燃焼実験をもとに自然発火の可能性を認めて再審開始を決め、大阪高裁も昨年10月にこれを支持。2人は20年ぶりに拘束を解かれ、釈放された。