再審初公判で起訴内容への意見を述べる青木恵子さん=2日、大阪地裁、イラスト・岩崎絵里
「娘を殺した母親」の汚名を着せられて20年余り。大阪市東住吉区の小6女児死亡火災で無期懲役とされた青木恵子さん(52)が2日、やり直しの裁判に臨んだ。「捜査、公判にかかわった人たちに謝ってほしい」。はかり知れない苦悩を胸に、法廷に立った。
検察側、母への有罪主張も撤回 大阪・小6焼死再審
「私はやっていません。共謀もしていません。私は無実です」
大阪地裁の201号法廷。白でそろえた上着とスカート姿で証言台の前に立った青木さんは、裁判長から起訴内容への意見を聞かれると、小声ながらもはっきりした口調で答えた。
火災2カ月後の1995年9月、長女めぐみさん(当時11)に対する放火殺人の疑いで逮捕されて20年。昨年10月に和歌山刑務所から釈放されてからも、検察はしばらく有罪主張を続ける姿勢を崩さず、不安な日々を送っていた。
この日、検察官が目の前で「有罪主張をしない。裁判所において、しかるべき判断を」と告げた。青木さんは弁護人の隣でうつむいたまま聴き入った。
「2人で計画して娘を殺しました」「殺害するため私が風呂に入らせました」
大阪府警に逮捕された後、そんな内容の自白調書が作られた。娘を失って自暴自棄になっていた。体調が悪い中で取り調べが続く。「なんで(娘を)助けられなかったのか。殺したのと同じや」。刑事からそう責められ、残る息子まで養子に出されると聞かされた。内縁の夫だった朴龍晧(ぼくたつひろ)さん(50)は「自白」したと言われ、心がくじけた。
そんな取り調べの経過を青木さんは被告人質問で詳しく説明した。弁護団は、このように作られた自白調書に証拠としての価値はないと主張。意見陳述で「わが子を殺した母とされ、服役し続けた苦しみは言い表せない」と訴えた。