長野県内で4月29日に撮影された冬眠明けのクマの親子(ピッキオ提供)
クマに遭遇してけがをするケースが5月に入って相次いでいる。子連れのクマが多いのが特徴だ。昨秋にドングリ類が豊作だったことや、暖冬が影響しているらしい。夏山シーズンを前に、専門家が注意を呼びかけている。
大型連休中の3日午前9時ごろ、長野県軽井沢町の人里離れた林道で、ひとりで山菜採りをしていた県内の男性(82)がクマにおそわれ、軽傷を負った。県によると、親子とみられる2頭のクマに遭遇し、母グマにうでや顔をかまれた。
岩手県岩泉町でも8日、山林で山菜採りをしていた男性(77)が親子とみられる3頭のクマにおそわれ、顔などにひっかき傷を負って入院。同県では4月下旬にも西和賀町の仙人山で登山中だった60~70代の男女3人が子連れのクマに襲われた。県は3月にツキノワグマの出没に関する注意報を2年ぶりに出して注意を呼びかけている。
新潟県胎内市でも8日、山菜採りで山に入った70代の男性がクマに顔を爪でひっかかれて深い傷を負った。クマは親子とみられる2頭で、男性は自力で家まで帰り、家族が消防に通報したという。同県では4月から今月9日までのクマの目撃情報が57件となり、昨年同期より14件多い。
山形や群馬、石川でもクマに襲われる被害がでており、新潟県の担当者は「今年は親子連れのクマが多いとみられ、人を襲う危険も高いので注意が必要」と話している。
なぜ子連れのクマが増えているのか。
石川県立大の大井徹教授(動物生態学)によると、昨年秋にドングリ類などの木の実が豊作だったことが影響した可能性がある。ドングリは冬眠前のクマのえさになる。母グマの栄養状態がよくなって出産率が高まり、春先の冬眠明けに子連れのクマが増えたと考えられるという。