七回表日本無死、中田は左越えに勝ち越しの本塁打を放つ=諫山卓弥撮影
(8日、WBC1次リーグB組 日本4―1豪州)
バットのやや先でたたき、打球を左翼席の最前列まで届かせた。均衡を破り、試合を動かしたのは5番の中田だ。今大会8打席目。先発野手9人で最も遅い初安打がここで出た。
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侍J×WBC激闘の軌跡
「先に2点目を取ってやろうと。先っぽだったけど、力で持っていった」。同点の七回、マウンドには代わったばかりの3番手・ウィリアムズ。初対戦の投手が多い国際大会では、打者はどうしても球を見がちだ。ここは初球から強振すると決めていた。甘いスライダーを逃さなかった。
エース菅野で必勝を期した第2戦は、打線が中盤まで苦しんだ。豪州は2004年のアテネ五輪でも敗れた因縁の相手。嫌な雰囲気を一振りで吹き飛ばした。
小久保監督の就任から3年余り。中田に目をかけ、かかさず代表に招集してきた。左手首に古傷を持つ中田は、毎年シーズン終盤になると痛みに悩まされる。それでも招集に応じてきた。「日本の野球界を引っ張る」という思いに共感したからだ。監督は中田の派手な髪形などは問題にせず「代表の試合前でも、いつも通り飲みに行けよ」と、声をかけたことも。そのかわり、グラウンドに立てば若い世代の手本になる。それが2人の約束だった。
不動の5番を任される男は「ここからどんどん暴れたい」。開幕2連勝で、1次リーグ突破は確実だ。投手は最少失点でしのぎ、打線は中軸が仕事をする。チームが形になってきた。(伊藤雅哉)
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○小久保監督 「投手力で勝った。今日みたいな継投で勝っていかないと勝ち上がっていけない。中田はヒットが出ていなかったけど、練習で状態が良かったので、そろそろかなと思っていた。大きな1本」