お笑いライブでネタを演じるじゅん選手=那覇市
「うちなーぐち」(沖縄の言葉)を駆使した芸で人気のお笑い芸人がいる。じゅん選手(30)。若手で珍しい、うちなーぐちの使い手だが、客に思うように言葉が通じないという現実にもがいている。沖縄が本土に復帰して15日で44年。自分たちの中にある「言葉の壁」にどう向き合うか、悩みながら前へ進む。
那覇市の劇場であったお笑いライブ。金髪のかつらをかぶったじゅん選手が登場した。
「わんねーやー英語やわからんハーフやいびーん(私は英語がわからないハーフです)」
英語のようなイントネーションのうちなーぐちで、観客の笑いを誘う。だが、アンケートでの評価は出演16組中で11位。「言葉が分からなくても理解できるネタだと思ったんですけど」
那覇市から車で30分ほどの北中城村(きたなかぐすくそん)南部がふるさと。子どもを見れば構ってくる近所のおばあさん、軽妙にからかい合うおじいさんたちのうちなーぐちが飛び交っていた。小学生の頃、風呂場で一人で口まねしてみると、「意外としゃべれて自分でも驚いた」
高校卒業後は建設現場で働いたが、元々、目立ちたがり屋。お年寄りのやりとりを表現したら面白いはずだと2012年、この世界に飛び込んだ。
うちなーぐちで芸を続ける厳しさを覚悟し、困難に挑むスポーツ選手をイメージして芸名をつけた。ヒット曲をうちなーぐちで歌う替え歌が人気を呼び、地元のCMや全国のテレビにも出演するようになった。
でも、年配の親戚たちはいい顔をしなかった。居酒屋で見知らぬ高齢者から「汚い言葉を使うな」と怒鳴られた。「僕のうちなーぐちは、子どもがふざけて使うような無礼な言葉遣いらしいんです。何でこんなに怒るのかと、それはもうすごかった」