4月16日の本震で甚大な被害を受けた熊本県南阿蘇村。復興への道のりは険しい。
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熊本地震 災害時の生活情報
崩落した阿蘇大橋の付近は16日朝、たたきつけるような強い雨と深い霧に覆われていた。現場で進められていた工事は「二次災害の恐れがある」として、全面中止が決まった。
国道57号を寸断し、阿蘇大橋崩落をもたらしたとみられる斜面の土砂崩れは、推定で長さ約700メートル、幅約120メートルに及ぶ(砂防学会調べ)。遠隔操作できる重機8台で崩落斜面を横切る復旧工事用の道を造ろうとしているが、斜面は非常に不安定な状態だ。担当者は「余震が続く中、工事にはとても苦労している」と話す。阿蘇大橋を元の場所に再建できるのか、未定のままだ。
南阿蘇村では、1カ月たった今も、村人口の4割にあたる約4700人、2千世帯に避難勧告が出され、約600人が避難生活を強いられている。村は500棟以上が全壊、半壊と予想するが、家屋被害の全容把握もまだこれからだ。一部断水も約900世帯に及び、村の担当者は「生活インフラも欠落しているが、すぐ解決できるような問題ではない」と話す。
交通網は、阿蘇大橋崩落で村の東西が分断されたほか、斜面の大規模崩落で国道57号やJR豊肥線、南阿蘇鉄道など、村と村外を結ぶ主要な交通網が途切れたままで、復旧のめどはたっていない。
観光への影響は村内だけでなく阿蘇全域に及ぶ。57号が途絶した現場は阿蘇への玄関口とも言える場所で、熊本市中心部から阿蘇市に通じていた。今は狭い山間の峠道を通らなければならず、渋滞もたびたび発生。阿蘇市の「道の駅阿蘇」の売り上げは3分の1ほどに落ち込んだという。テレビ出演で有名なチンパンジーのパンくんがいる阿蘇市の人気動物園「カドリー・ドミニオン」も昨年に比べ、来園数が6分の1に減っているという。(斎藤健一郎)