東北地方の旅館の無線LANに接続した記者のパソコンに、外部からサイバー攻撃を受けたことを示す警告が表示された=昨年12月
三重県の旅館で見つかったサイバー攻撃の痕跡は、宿泊施設や重要な国際会議が危険にさらされている実態を浮き彫りにした。機密情報を効率的に盗み取ろうと、高級ホテルなどを狙う「標的型」の攻撃が国内外で確認されている。
旅館のLAN、ウイルスの危険も サミット控え守り薄く
昨年末、東北地方の老舗旅館で記者がパソコンを無線LAN(WiFi)につないだところ、サイバー攻撃を検知したと警告する画面が現れた。攻撃の発信元のIPアドレス(ネット上の住所)を見ると、館内のパソコンを示していた。
旅館に伝えてパソコンを調べると、旅館所有の1台がウイルスに感染していた。外部からの指令で、無線LANを経由して宿泊客のパソコンに侵入しようとする「遠隔操作ウイルス」で、昨年発覚した日本年金機構へのサイバー攻撃に使われたウイルスと似た種類だったことが、その後の調査で分かった。
ロシアのセキュリティー会社、カスペルスキーが2014年に公表した調査によると、07~13年の間、日本、中国、台湾などの高級ホテルで、宿泊した政府関係者や大手企業幹部らのパソコンから情報が盗み取られていたという。攻撃者は特定されておらず、同社は一連のサイバー攻撃を「ダークホテル」と名付けた。