ターミナルビル周辺の警戒にあたる警察官=25日午前8時55分、中部空港、内田光撮影
厳戒態勢が敷かれた中部空港、カナダ首相の登場に騒然とする深夜の名古屋駅――。伊勢志摩サミットに出席する各国首脳が集まり始めた。三重県伊勢市では25日朝、国内外のメディアの拠点がオープンした。
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中部空港は、旅客便は通常通りに運航されている。名鉄中部国際空港駅からターミナルビルへ向かう入り口では、警察官が警備するなか、旅行客が手荷物検査などを受け、長い列が出来た。娘2人と韓国に行く名古屋市の主婦村上由美さん(56)は「すごく不安だったけど、とてもスムーズでした」。
愛知県豊川市の会社員河村智秀さん(32)は、グアムへの家族旅行。車で普段より2時間早めに家を出た。「要人が陸路で移動すると道路状況がどうなるか分からない。念には念を入れた」。長男の泰佑(たいすけ)君(5)は、スカイデッキの閉鎖にがっかり。「飛行機見たかった……」
北海道への修学旅行に向かう愛知県立幸田高校。学校は、渋滞を懸念して車で空港に来ないよう指導し、2年生約240人が無事集合した。保護者からは「日程を変えられないのか」との声もあったというが、吉田正義校長は「トラブルなく順調に行けそうで良かった」と胸をなで下ろした。
夫婦で旅行に向かう名古屋市の会社員男性(56)は車で空港にきた。検問で身分証の確認などを求められたが、「仕方ないね。何も起きないのが大事だから」と理解を示した。
■カナダ首相、深夜に名古屋着
カナダのトルドー首相が24日深夜、サミット参加国の首脳のなかで最初に東海地方に入った。
24日午後11時50分ごろ、トルドー首相は東京発の最終の新幹線で、名古屋駅に到着。送迎の車が待機した駅西口周辺は、大勢の警察官のほか、足を止めた人たちで騒然となった。「オバマ(米大統領)が来るの?」との声も上がった。
駅前の横断歩道は直前に通行止めに。駅に向かう人たちは「終電に間に合わないよ」と嘆きながら、回り道をして駅に向かった。
首相が現れたころには、待ち構えた通行人や報道陣は100人以上にふくれ上がった。ジーンズにジャケット姿の首相は、何度も手を上げて歓声に応え、黒塗りの車に乗り込んだ。「車内からも手を振ってくれた。サミットの盛り上がりを感じられてよかった」と名古屋市の会社員、斉藤由貴さん(29)。
一帯は車も通行止めになり、信号は青信号に。パトカーに囲まれた車列は高速道路に入り、三重県に向かった。
AFP通信によると、トルドー首相は夫人と夫婦水入らずで11回目の結婚記念日を祝うため、1日早く現地入りしたという。
■国際メディアセンター稼働
主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の取材拠点となる国際メディアセンター(IMC、三重県伊勢市)の業務が25日午前、本格的に始まり、国内外の報道関係者が続々と集まった。
スリランカのデイリー・ファイナンシャル・タイムズ紙の特派員チャニカ・インブラーナさん(52)は「スリランカがアウトリーチ会合に招かれたことでサミットへの国内の関心は高まっている。この機会が日本との関係強化につながることを願う」と話した。来日は3回目だが伊勢を訪れたのは初めて。「東京や京都に比べて静かで過ごしやすい。伊勢神宮にも行ってみたい」と話した。カナダ・トロント大のジョン・カートン教授(68)は「気候変動への対応に関心がある」と話し、サミットで取材したことをカナダの新聞や英国の雑誌に寄稿する予定という。
IMCには、サミット会場から約20キロ離れた三重県営サンアリーナが使われている。メインアリーナ(約3500平方メートル)とサブアリーナ(約1700平方メートル)に加え、近くにある別館アネックスの計3施設がある。(浦島千佳)