厚切りジェイソンさん=西田裕樹撮影
陽気な外国人です。うちのお父さんは。子どものときからよくダジャレを言い合いました。食事中に突然パルメザンチーズをまき散らして、おばあちゃんを驚かせたり、氷を口にいっぱい入れ、ガガガッと首を左右に回してかき氷機をまねたり。いまだに、いつも人を笑わせようとしています。
自営業だったので、毎晩一緒に食事して、ボードゲームやチェスで遊びました。多くの日本人と違って、お父さんにとって大切なのは神様、家族、友達、仕事の順。この夏57歳になりますが、厳格なクリスチャンで、お酒を飲んだ姿は見たことがありません。多分お母さん以外の女性と付き合ったこともない。今は2人で暮らしていて、毎日出かける前にチューをしています。2人のけんかはほとんど見たことない。
「R―1の決勝に出るよ」と伝えても、お父さんにはどんなものかも分からない。日本語が分からないので、私のパフォーマンスを見て「何でこんなに怒ってるの?」と言われました。最近、ディズニーの「ズートピア」という映画に声優として少しだけ出演したんだけど、それを見て初めて「すごいね!」と言われました。
小さい頃、私は「部屋を片付けなさい」とか注意されても、「これこれの理由によって、今それをやっても仕方がない」と反論するような子どもでした。お父さんには、将来は弁護士になるのではと言われていました。今は私が長女に同じことをされています。まだ4歳だから論理が通っていないけど。近いうちに、理詰めで迫るようになるでしょう。私はそうなってほしいと思っています。
日本では、ほとんどの子が自分の考えを言わないじゃないですか。周りと合わせて。生きていないような感じですよ。それは嫌。自分がやりたいことを、ちゃんと理由もつけて説明できるようになってほしいね。
私も何か物事を決めるとき、お父さんから「こうなりなさい」と言われたことは一度もありません。口は出さず、生き方で見せるだけでした。自分の人生は自分の責任ってね。(聞き手・川口敦子)
◇
あつぎり・じぇいそん 1986年、米ミシガン州出身。一人芸日本一決定戦「R―1ぐらんぷり」で2年連続決勝進出。米IT企業の日本法人役員も務める。著書に「日本のみなさんにお伝えしたい48のWhy」。