差別的なスピーチを繰り返しながら名古屋市中心部を歩くデモ隊。大勢の警察官が警備に当たった=29日午後3時24分、名古屋市中区、相場郁朗撮影
ヘイトスピーチの解消を目指す法律が成立して初めての週末、名古屋市の繁華街で29日、在日コリアンへの差別をあおる内容のデモがあった。反対する市民が激しく抗議した。
「在日特権を許さない市民の会」の前会長らが呼びかけたデモには約60人が参加。繁華街の大須商店街などを歩いた。朝鮮学校への補助金問題を掲げたが、実際には「朝鮮学校を日本海にたたき込め」「朝鮮人は土下座しろ」などの差別発言が繰り返され、デモ隊とほぼ同数の市民が「差別主義者は帰れ」と抗議した。
法律では「不当な差別的言動は許されない」とし、国や自治体に施策の推進を求めた。しかし、前会長は成立後もツイッターで「今までと変わらず全国で行動を続ける」と宣言。市民団体は名古屋市に、デモ出発点の公園を使わせないよう求めたが、市は「申請に不備はなく、条例に基づいて許可せざるを得ない」と使用を認めていた。
取材したジャーナリストの安田浩一さんは「相変わらずの差別デモで許し難い。ただ、抗議する市民に顔を向けてきた警察官が、今日はデモ隊の方を向いて警備した。法律の効果かもしれない」と話した。
市民団体「CRAC(クラック)758(ナゴヤ)」の近藤友美さん(39)は「名古屋市はいつまで差別の解消を市民任せにするのか。行政の役割を果たしてほしい」と訴えた。(黄澈)