アフガニスタン北部のアイ・ハヌム遺跡で見つかった大理石製の「ゼウス神像左足断片」。紀元前3世紀ごろの作品で、ギリシャ文化がアフガンまで伝わったことを物語る。アフガン国立博物館にあったが、不正に持ち出されて日本に流れ着いた=東京国立博物館、乗京真知撮影
紛争下のアフガニスタンから盗み出された貴重な文化財のうち、日本で見つかった仏像や壁画などがおよそ20年ぶりにアフガン側に戻される。闇市場を通じて流れ着き、専門家らが一つひとつ集めてきた102点が、返還を前に東京で公開されている。
カブールの国立博物館に黒い覆面の男たちが押し入ったのは2001年夏、タリバーン政権下のことだった。「仏像は(イスラム教が禁じる)偶像崇拝につながる」と主張し、収蔵品をハンマーで破壊した。
「木箱に隠した品も次々と見つかり、壊されました。隠し場所を教えなかったため、家族を殺された仲間もいました……」。学芸員のハキムザダ・アブドラさん(56)が振り返った。
博物館には文化財約10万点が収められていた。東西を結ぶシルクロードのほぼ中央に位置するアフガンは「文明の十字路」と呼ばれる文化財の宝庫だったが、1989年のソ連軍撤退後、内戦が激化した。93年には博物館にもロケット弾が着弾。混乱に乗じて略奪が始まった。
その後、極端な「イスラム法支配」を掲げるタリバーンが台頭。01年春の中部バーミヤンの大仏爆破など遺跡の破壊も続き、この頃までに博物館の文化財の7割が消えた。