茶畑で新茶を刈り取る富澤一行さん=熊本県益城町
熊本地震で2度の震度7に襲われた熊本県益城(ましき)町で栽培された摘み立ての新茶が、「復興益城茶」として売り出されている。「2度の地震に耐えた茶畑 この大地の力をみなさまへ」。ボランティアや近所の人たちに助けられて収穫にこぎ着けた感謝の思いを込めた。
特集:熊本地震 ライフライン情報など
特集:あなたの街の揺れやすさを住所でチェック
熊本地震 災害時の生活情報
販売しているのは、1929(昭和4)年創業の「お茶の富澤」。代表は4代目の富澤堅仁(けんじ)さん(34)。3代目の父一行さん(66)ら家族で経営している。
4月14日の前震で、堅仁さんは町内の販売店で落ちた商品を片付けた後、消防団の活動に参加。16日未明の本震のときは、町内の橋で交通整理をしていた。橋が波打ち、砂煙とともにガードレールが崩れ落ちた。
茶畑と工場は無事だったが、販売店は全壊。家族と約2週間、避難所で暮らした。新茶収穫は23日ごろからの予定だったが、1週間遅れた。堅仁さんは「早く摘みたい」と焦ったが、周辺は多くの家が倒壊し、車中泊をしている人も大勢いた。「こんなときにお茶を作っていていいのか」。そんな自問自答もあった。
茶畑の面積は3・5ヘクタール。茶葉にシートをかぶせて成長を遅らせ、その分、旨(うま)みや甘みが増すように工夫するのが伝統の技だ。今回その作業をボランティアや近所の人が手伝ってくれた。
堅仁さんの妻知春さん(33)は、出来上がった新茶を販売する際、店頭に添えたり、郵送時に同封したりする商品案内に「復興益城茶」の字を入れた。文言は家族で話し合い、知春さんが直筆で書いた。「汚い字だけど、『地震に負けず前を向いてやっています』と伝えたい」と話す。