厚生労働省は、病気による体と心の痛みを和らげる緩和ケアについて、慢性心不全の患者にも積極的に採り入れるように対策を強化する。胸の痛みや息苦しさの強い慢性心不全は緩和ケアの必要性が高いのに、実際に受けられる患者は限られているという。
慢性心不全の患者は高齢化に伴って急増し、国内では約100万人との推計もある。全身の機能が少しずつ落ちていき、最後は急激に悪化して亡くなることが多い。2014年に公表された世界保健機関(WHO)の調査では、終末期に緩和ケアが必要な成人患者は心不全などの心血管疾患が38%と最多で、がんは34%。しかし、日本では緩和ケアを受けているのは、がん患者が大半を占めている。
こうした現状を改善しようと、厚労省は有識者らによる検討会を立ち上げ、推進策の検討を始めた。慢性心不全患者に望ましい緩和ケアのあり方を具体的に示すとともに、医師を対象とした研修の充実や、相談体制づくりなどの支援策もまとめる予定。
慢性心不全患者への緩和ケアに取り組む一部の医療機関では、病気の進み方を患者に早めに理解してもらう▽生活習慣の見直しや服薬指導で悪化を遅らせる▽末期では痛みを和らげるために医療用麻薬も使う――などをしている。(福宮智代、寺崎省子)