「科学とは自然を学ぶ手法であり、正しい方法が存在するのです」=テキサス州オースティン、ランハム裕子撮影
アリストテレスは軽率で、デカルトは過大評価――。科学史の先哲を、ノーベル物理学賞のスティーブン・ワインバーグ教授が容赦なく切り捨てる著書「科学の発見」が、論争を巻き起こしている。現代の視点で過去を裁く手法に批判はあるが、一方で教授が投げかけるのは「科学とは何か」という根本的な問いだ。本人に聞いた。
――なぜ物理学者のあなたが科学史なのですか?
「もともと歴史に興味がありました。私は何かについて学ぼうと思ったときには、そのテーマを講義することにしています。テキサス大の学生たちに科学史の講義をするうち、古代ギリシャのプラトンやアリストテレスといった人たちは、科学者というよりも『詩人』、と呼んだ方がふさわしいと分かったのです」
――辛辣(しんらつ)ですね。科学の源流は、プラトンやアリストテレスにある、と考える人たちもいます。なぜ「詩人」なのですか。
「自然の観察抜きに論理や数学だけに頼って理解しようとするのは科学ではありません。例えば彼らは物質を構成する元素について見解を述べていますが、理論や観測に基づいていません。単に、世界はこうあるだろう、という詩的イメージを述べているに過ぎません」
――科学史の「知の巨人」たちの業績を「科学ではない」と断じたあなたの著書は、歴史家たちから批判されました。