厚生労働省は10日、ホテルや旅館などで「迷惑客」の宿泊を断れるように旅館業法を見直す方針を有識者検討会で示した。訪日旅行客の増加をにらみ、空き部屋などに有料で泊める「民泊」を営みやすくする狙いだが、障害や人種による差別など合理的でない拒否はできないように条件は残す。今年度中に同法改正案を国会に提出する。
敗戦直後の1948年施行の同法は、だれでも寝場所を確保できるよう、伝染性の病気の客や賭博など違法行為の恐れがある客らを除き、原則として宿泊拒否を罰則つきで禁じている。
世界的に広がってきた民泊の大手仲介サイトでは、客から民泊提供側(ホスト)への評価とともに、ホスト側が騒音やごみ投棄など迷惑行為があったか登録客ごとに評価し安全を担保するシステムがあり、評価の低い客を断れる実態がある。民泊を法規制の対象にした上で普及させていくには、迷惑客拒否を認める必要があると厚労省は判断、現在は多くの宿泊施設があり、拒否制限の意義も薄れたとして大幅に緩和する。
法改正されれば、民泊で女性オーナーが「女性客だけを泊めたい」といった営業ができるほか、大人専用のホテルや旅館などが増え、利用者の選択肢が広がる可能性もある。ただ、恣意(しい)的な差別の宿泊拒否につながる恐れもある。(竹野内崇宏)