リオデジャネイロ五輪出場を訴えるマルクス・レーム=ロイター
リオデジャネイロ五輪に出場出来るかどうかを巡り、右足にカーボン製の義足をはめたジャンパーが注目されている。障害者クラスの走り幅跳びで、8メートル40の世界記録を持つマルクス・レーム(ドイツ)。健常者のトップ選手を超えるジャンプを連発し、五輪に出れば、メダルは確実とも言われる。17日、ウィーンでの国際陸上連盟の会議で、出場の可否が決まる。
義足ジャンパー、五輪なら「金」 「出場したい」で論争
リオオリンピック2016
「現時点では、義足が明確に有利に働いているとはいえない」
5月30日、ドイツのケルン。レームは研究者3人と記者会見し、健常者と比べた時の走り幅跳びの影響についての研究結果を発表した。レームは「この結果はうれしい。夢はあきらめない。障害者スポーツの存在を示したい」とリオ五輪出場への思いを語った。
ケルン体育大などで行われた研究では、健常者7人、レームと同様にひざ下を切断した義足3人の選手を分析した。走り幅跳びの動作は、「助走」「踏み切り」「跳んでから着地」までの3段階に分かれる。
義足の選手に違いが見られた点は二つ。助走は、健常者より安定感の劣る義足は「不利」というデータが出た。速度だけでなく、健常者の方が助走しながら飛距離を予測しやすい側面もあるという。
一方、踏み切りでは「有利」なデータが出た。踏み切った直後の垂直方向の速度は、健常者の平均秒速3・37メートルに対し、義足は3・39メートル。レームは3・68メートルだった。義足は踏み切り時にブレーキのかかる力が小さい傾向も見られた。
レームは義足で踏み切る。ケルン体育大のウォルフガング・ポットハースト教授は「健常者と踏み切りの戦略は異なる」と話したが、多角的なデータを総合判断して「義足が明確に有利に働くとはいえない」と結論づけた。
走り幅跳びは、「走る」ような周期運動ではない。研究チームは「助走と踏み切りのどちらに重みがあるのか分からない」と説明している。
■扉開けばメダル候補に
8メートル40。レームの走り幅跳びの自己ベストだ。昨年10月の障害者の世界選手権でマークした。これは2012年ロンドン五輪金メダルの記録8メートル31を9センチ上回る。今年2月には英国で開かれた健常者の大会で世界選手権2位の選手を破って、優勝。今年、健常者でレームの記録を超えたのは、8メートル45をマークしたマーキス・グッドウィン(米)しかいない。五輪への扉が開かれた時点で「メダル候補」。単なる参加だけにとどまらないところに、この問題の複雑さがある。