虎ノ門周辺で進む主な再開発
中小ビルが肩を寄せ合うサラリーマンの街、東京・虎ノ門で大規模な再開発計画がいくつも進んでいる。2020年東京五輪・パラリンピックに向け、東京の新たな「玄関口」に――。関係者の意気込みは大きいが、にぎわいを生むハードルは低くない。
新橋と虎ノ門を結ぶ「新虎通り」。「再開発を狙って、不動産業者が何人も名刺を置いていった。『話をさせてください』と」。通り沿いの4階建ての自宅で青果卸を営む熊木偉夫(ひでお)さん(51)は振り返る。
街の風景が変わり始めたのは14年。不動産大手の森ビルと東京都が連携し、地上52階建て、高さ247メートルの高層複合ビル「虎ノ門ヒルズ」が開業した。さらに都心の新たな大動脈として、新橋―虎ノ門間の都道・環状2号線の地上部分に新虎通りが開通した。
最大幅13メートルの歩道がある通りを、パリのシャンゼリゼ通りのように歩いて楽しい街に――。都は、長さ約150メートルにわたりオープンカフェなどが並ぶおしゃれな通りにしようと、道路の占有規制を緩める「東京シャンゼリゼプロジェクト」の第1号に選んだ。
開通から2年。通りのカフェはまだ3軒しかない。熊木さんを訪ねた不動産業者も、この1年では1人もいなかった。観光客の姿はほとんどなく、平日も休日も人通りは少ないままだ。「もともとサラリーマンの街。激変はしないよ」
住宅や中小ビルが密集していた地域にできた新虎通りには、出入り口が通りに面していないビルも多い。もとからある通り側に玄関があるためだ。都や港区は、新虎通りに面した1階部分に飲食店や商業施設を入居させることを条件に、高いビルを建てられる新たな制度を導入した。現在、この制度を利用して三つのビル建設が進む。
一帯の30世帯と30社でつくる自治会「田村新交町会」会長の冨田幸雄さん(76)は、8階建てのビルを所有する。別のビルの地権者らと連携すれば、17、18階建てのビルを建てられるが、「地権者全員がまとまるのは困難」と言う。「資材が高騰し、いま建て替えたら損をするかも。街を早く変えたいけど、10年、20年はかかりそう」