福岡地裁小倉支部で5月にあった裁判員裁判をめぐり、裁判員に「よろしく」などと声をかけて威迫したとして、福岡県警は17日、会社員中村公一(41)=福岡県行橋市草野=と無職楠本利美(40)=同市南大橋3丁目=の両容疑者を裁判員法違反(威迫・請託)の疑いで逮捕し、発表した。
補充裁判員1人が辞任 工藤会系公判、声かけ問題
2009年に裁判員制度が始まって以来、同法違反容疑での立件は初とみられる。
問題があったのは、北九州市内で昨年1月に知人男性を日本刀で刺したとして、工藤会系組幹部(40)が殺人未遂罪に問われた裁判。関係者によると、2人はこの幹部の知人という。
北九州地区暴力団犯罪捜査課によると、2人は5月10日午後4時ごろ、北九州市小倉北区の地裁小倉支部近くで、初公判を終えて支部から出てきた裁判員2人に「あんたら裁判員やろ」「顔覚えとるけんね」「よろしくね」などと声をかけ、裁判員を威迫した疑いがある。
裁判員法は、裁判員に威迫行為(脅迫)や請託(依頼)をした場合は2年以下の懲役または20万円以下の罰金を科すと定めている。
声をかけられた裁判員が同支部に申し立てて発覚。被告側弁護人(当時)によると、組幹部は「(声かけについて)全く知らない」と関与を否定したという。
裁判は5月12日に結審。同16日に判決が言い渡される予定だったが、同支部は判決期日を取り消した。その後、裁判員4人と補充裁判員1人から辞任の申し立てを受け、解任を決定。今月9日には両容疑者を裁判員法違反の疑いで県警に告発していた。
裁判は今後、①裁判員を新たに選任して審理をし直す②裁判員を除外して裁判官だけで判決を出す、などの可能性があるが、同支部は「対応は決まっていない」としている。