著名投資家ジョージ・ソロス氏は20日、英紙ガーディアン(電子版)への寄稿で、英国の欧州連合(EU)からの離脱が決まれば、英ポンドは対ドルで20%以上急落する可能性があると指摘した。「(木曜日の国民投票で)離脱に投じることで暗黒の金曜日(ブラックフライデー)を迎えることになるだろう」と警告している。
ソロス氏は、離脱によるポンドの急落は、1992年9月に起きた「暗黒の水曜日」と呼ばれるポンド暴落より「大きく破壊的なものになる」と予想。ポンドの価値は対ドルで少なくとも15%は下がり、対ユーロでは1ユーロ=1ポンドとほぼ等しくなる可能性があるとして「金融市場や投資、雇用などにすぐに劇的な影響を与える」と指摘した。
92年のポンド暴落は、欧州共通通貨をつくる過程で英経済の限界を見切ったソロス氏自身が売りを仕掛けた。英国はポンドの価値を守りきれず、ユーロにつながる欧州為替相場安定メカニズム(ERM)からの脱退を余儀なくされた。
ソロス氏は92年当時と今回を比較。当時はポンド安により、英国は輸出が拡大するなどして経済は上向いた。しかし、今回は離脱を決めた後に景気後退に直面した場合、政策金利がすでに過去最低にある英イングランド銀行(中央銀行)が利下げなどによって取れる刺激策は限られると指摘。不透明さから製造業の輸出を好転させるように働かないとした。(ロンドン=寺西和男)