湖北省武漢にある建材用鉄鋼市場。中国経済の減速で売れ残った鉄鋼が輸出され、世界で市況の悪化を招いている=斎藤徳彦撮影
中国経済減速の影響が続き、製造業を中心に業績回復の重しになっている。
国内景気「足踏み状態」78社に増加 主要100社調査
主要企業100社への景気アンケートで、業績にマイナスの影響が出ていると答えた企業は51社にのぼり、昨年11月の前回調査より10社増加。うち製造業が35社を占めた。マイナスの影響が「大いに出ている」は9社、「少し出ている」は42社だった。
マイナスの影響があった51社に複数回答で具体的な内容を聞いたところ、「中国市場での売り上げの減少」が26社で最も多く、「中国での生産の減少」(12社)、「中国への輸出の減少」(11社)が続いた。JXホールディングスの内田幸雄社長は「中国国内でエンジンオイルの売れ行きが悪い」。日立製作所は「建設機械や昇降機の事業を中心に生産や売り上げが減少している」(東原敏昭社長)という。
過剰設備といった中国経済の構造問題を指摘する声もあった。新日鉄住金の栄敏治副社長は「鋼材需要が伸び悩むなか、過剰生産に歯止めがかからず、余った製品が大量に輸出されている。これが市況の悪化を招き、収益悪化につながっている」と指摘する。
国内消費を支える訪日中国人客の「爆買い」にも変調の兆しが出ているようだ。エイチ・ツー・オーリテイリングの鈴木篤社長は「同じ商品を大量に買うような人は減ってきた」。高島屋の木本茂社長も「宝飾品など高額品の売れ行きが落ちている一方、化粧品が急速に伸びている」と話す。
観光客の伸びの鈍化を懸念する声も出ている。ANAホールディングスの長峯豊之常務は「訪日中国人の拡大ペースに陰りが出ており、中国路線の搭乗率にも影響している」と話す。
■熊本地震、生産拠点被災 製造業に影響
最大震度7を観測した熊本地震の影響があったと答えた企業は4割近くにのぼり、うち6割を製造業が占めた。マイナスの影響が「大いにあった」3社は、いずれも製造業。「少しあった」は37社、「ほとんどなかった」は47社だった。
生産拠点が被災し、操業停止を強いられた企業の中には、復旧に時間を要しているところもある。三菱ケミカルホールディングスの越智仁社長は「フィルム工場が停止し、完全復旧には時間がかかる」と話す。
影響は流通業や観光業、外食産業にも及んでいる。Jフロントリテイリングの山本良一社長は、「熊本市の店舗が営業を休止したほか、福岡市の店舗で消費者マインドの悪化による売上高の減少がみられた」。ロイヤルホールディングスの黒須康宏社長も「全国で自粛ムードもあり、外食の売上高もホテルの稼働率も、前年比で戻りきれていない」と話す。日本マクドナルドも、熊本県内の36店中6店がまだ営業できない状況という。
ANAホールディングスの長峯豊之常務は「九州地区への旅行者数が多少減っている」。ユー・エス・ジェイでも九州からの客のキャンセルが少しあったという。