国による給付型奨学金制度の創設を望む島田了輔さん=東京都目黒区の東京大学駒場キャンパス
参院選で初めて投票する18、19歳は、国政にどんな施策を期待するのか。各地で意見を聞いた。
特集:2016参院選
朝日・東大谷口研究室共同調査
特集:18歳選挙権
「(返済不要の)給付型奨学金制度をつくり、貧富の差が固定するような社会を変えてほしい」。東京都の大学2年、島田了輔さん(19)が望むのは、貧困世帯からでも安心して進学できる環境づくりだ。
高知市出身。大学に進むまで非正規雇用で働く母と2歳下の妹との3人暮らしだった。生活保護を受け、高校の修学旅行は費用が払えず参加できなかった。スーパーの試食だけでやり過ごした日もあった。
数学の研究者を目指している。民間企業の給付型奨学金(月6万円)と日本学生支援機構の貸与型奨学金(月5万1千円)を受け、さらに大学の授業料免除制度を使って学んでいるが、成績や期間などの条件があり、いつまで利用できるか不安は大きい。
同機構の奨学金利用者は134万人(2015年度)。貸与型しかなく、有利子のものが多くを占める。島田さんは言う。「給付型は公的な制度がなくて対象者が少なく、成績などの要件も厳しい。自分は幸運だが、貧富に関わらず努力する学生が報われる制度を作ってほしい」
■予算、復興加速させる事業へ
東日本大震災で被災した岩手県宮古市。自動車整備会社に勤める前川幸月さん(19)は、「予算の無駄を省き、被災地の復興を加速させる事業に使って」と願っている。
津波で自宅は全壊し、家族5人で4年間、仮設住宅に住み続けた。高校卒業と同時に就職した昨春以降、給料の大半は一家の生活費に充てている。今は自動車整備士の資格取得を目指し、仕事と勉強の毎日だ。「この仕事を続け、将来は家庭も持ちたい。投票には必ず行くので、政策について若い人にも届くように分かりやすく説明してほしい」と話す。
■若年層の離職率下げて
参院選では、再度の消費増税先送りの判断も問われる。長野市の大学2年、松木雄太さん(19)は「大きな買い物の予定もないし……」と税率アップがどう影響するか実感がわかないが、「増税するなら雇用政策を充実させてほしい」と話した。
「将来世代にツケが回される」との指摘もあるが、「以前から自分たちの世代には国の年金が支給されないと思っていた。危機感はない」。むしろ、気がかりは卒業後の就職だ。学んでいる電気電子工学の分野が希望だが、安心して働き続けられるかどうか。「数十年後の年金より若年層の離職率や失業率を下げる施策の方が大事」
■地方活性化の方法は
全国で最も人口が少ない鳥取県。北栄町の高校3年、中西凌太さん(18)は地方の活性化策が気になる。「ふるさとが『消滅する』と言われるのは嫌」
通学時に見える2両編成の短い列車や駅の向こうに山々が連なる故郷の風景が好きだが、「県内に大学が少なく、選択肢が限られる」。進学は県外を考えている。「人口格差は教育格差にもつながっていると思う。どうすれば地方は活性化するのか。考えをまとめて投票したい」と話す