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公示後のテレビ党首討論1回だけ 見えない政見、背景は

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大学生の立会人らが見守る中、投票する中村清世里(すせり)さん=23日正午すぎ、名古屋市瑞穂区の名古屋市立大学、細川卓撮影


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今回の参院選では公示後の18日間の選挙戦のなかで、与野党の党首が集うテレビ討論会は1回しか開かれない見通しだ。丁々発止のやりとりを通じて、有権者が政見を比較できる貴重な機会なのに、なぜなのか。


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公示を翌日に控えた21日夜、テレビ朝日系「報道ステーション」で放映された与野党9党首による討論会は、終了直前にヒートアップした。


公示後に再度の討論会の開催を呼びかけた司会者に対して、安倍晋三首相は「期日前投票が増えた。その前に議論を終えておくべきだ」。一方、民進党の岡田克也代表は「最後の2週間に党首討論がないのは異常。総理が来ないなら、我々だけでもやりますよ」と応じた。


テレビ各局のうち、今回、公示後に党首討論を予定しているのは24日のTBSだけだ。他の計4局の討論会は公示前の19日と21日に集中した。自民側がテレビ局に対して、安倍首相の遊説日程などを理由に公示前後の1週間に実施を設定するよう打診したという。


朝日新聞の調べでは、前回の2013年参院選で党首討論を開いたNHKなど5局のうち、4局が公示後に実施。旧民主党政権時の10年参院選は、4局が公示後に党首討論を開いた。


「(党首討論は)何より重要な機会であり、民主主義の基本と言っても過言ではない」。有権者の選挙への関心が高まる公示後に討論が開かれない事態に、民進、共産、社民、生活の4野党は「極めて問題」として16日、自民の谷垣禎一幹事長に、首相の出席を要請した。(笹川翔平、大城大輔)


■民放幹部「関心が低い」


安倍首相の出演期間を限るという自民側の打診をどう受け止めたのか。朝日新聞の取材に対し、多くのテレビ局は「番組制作に関わることなのでコメントは差し控える」などと回答。公示前でも後でも選挙に合わせて党首討論を1回開くという意味では「従来と変わりない」という立場だ。


ある民放幹部は「参院選や政治状況に視聴者の関心を引きつける要素があまりない」とみる。「党首討論をやっても視聴率がとれないということなら、現場もそれを気にする」


選挙報道をめぐっては、14年の衆院選前、TBSの「NEWS23」に出演した安倍首相が街頭インタビューが偏っているとして、番組中に「おかしい」と批判。その後、自民がNHKや在京民放テレビ5局に、選挙報道の「公平中立」を求める文書を送った。今年2月には、高市早苗総務相が放送法4条の「政治的公平」の規定を根拠に放送局の電波停止を命じる可能性に言及。「政治の圧力」として批判を浴びた。


テレビ局側も神経質になっている。ある民放チーフプロデューサーは「選挙の話は角度をつけられず扱うのは難しい。待機児童の話題は主婦の関心事かもしれないが、取り上げればそれを公約にしている候補を大きく扱うことになり、公平性に問題が出る」と語る。


■イライラも判断材料


《ジャーナリストの田原総一朗さんの話》 テレビ討論は、党首の言葉に加えて、苦しい表情やイライラも伝え、有権者の判断材料になる。投開票日までの2週間は討論しないなんてとんでもない。公示後の討論こそが重要だ。安倍首相は直前の議論で自民党の欠陥が見えるのが嫌なのではないか。自民党は選挙前になると経済政策を訴え、選挙後に秘密法や安保法制など国民の拒否反応が強い政策を進めてきた。今回の隠れた争点は憲法改正だ。与野党の党首は投票までテレビで討論し、こうした争点をめぐる考えの違いを明らかにすべきだ。


■テレビの役割放棄か


《逢坂巌・駒沢大専任講師(政治コミュニケーション)の話》 テレビの影響力は怖い。「舛添報道」のように炎上すると世論の批判が燃えさかる。安倍首相には、閣僚不祥事などを批判され辞任に追い込まれた第1次政権のトラウマがあるのだろう。2次政権では出演するテレビ局の選別など見られ方に神経質になった。政党の組織力が落ち、無党派層の動向が選挙を左右するため、今回は画面の中で波風を立てたくないのでは。局側にも、政治の圧力以前に、文句を言われるのが面倒だという空気があるのなら、テレビの役割の放棄になってしまう。



■期日前投票始まる


参院選の期日前投票が23日、始まった。名古屋市瑞穂区の名古屋市立大に設けられた投票所では、新たに有権者となった18歳、19歳の学生も一票を投じた。


正午の開始とともに投票した同大1年の中村清世里(すせり)さん(18)は「すごく緊張した。将来は働きながら子育てがしたいので、保育の問題に関心がある。『日本の未来につながるように』と願って投票しました」。


投票所はこの日限定で、講義棟1階の会議室に設けられた。同大の学生も立会人などをして手伝った。比例代表の投票用紙を渡す役割をした2年の酒見萌子さん(19)は「投票所の雰囲気をつかんでから、自分の投票に行きたい。憲法や原発に対する考えをポイントにして選びたい」と話した。


総務省によると、今回の参院選では全国98の大学、高専、短大で期日前投票所が設けられる。



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