田中角栄元首相
田中角栄・元首相に関する書籍の出版が相次いでいる。その言葉を集め、昨年の発刊から60万部を超えた本もある。政治家はあまたいるが、なぜ「角栄」なのか? 参院選まっただ中のいま、探った。
特集:2016参院選
「スケールの大きな指導者でしたね」
大阪・キタの紀伊国屋書店梅田本店の「角栄本」特設コーナー。デザイン会社を営む寺内孝典さん(56)=大阪市=はそう言い、角栄の語録を集めた「田中角栄 100の言葉」(宝島社)を手に取った。「心に響く言葉があるんじゃないかなと思って。角栄さんの全てを肯定できないけど、政治への覚悟みたいなものは参院選の候補者にも見習ってほしいですね」
角栄は1918年に新潟県二田村(現・柏崎市)に生まれ、高等小学校を卒業した後に上京した。建築事務所などで働き、日中戦争では旧満州(現・中国東北部)に出征。戦中に建設会社を興し、終戦から約2年後の47年の総選挙に新潟3区から立候補、初当選を果たした。28歳だった。
39歳で郵政相、44歳で大蔵相、47歳で自民党の幹事長に就き、54歳だった72年に「日本列島改造論」を掲げて首相に。国土開発主導の成長政策を進めるとともに国交断絶状態にあった中国を訪問し、国交を正常化させた。
一方で「金権政治」と呼ばれた手法で派閥を束ねて歴代政権を支え、「田中支配」などとも評された。首相退陣後の76年、首相時代に米ロッキード社の航空機売り込みをめぐって5億円を受け取ったとして逮捕・起訴され、最高裁へ上告中の93年に75歳で死亡した。
角栄に関する書籍は過去にも出版されてきた。ところが、紀伊国屋梅田本店によると、昨年は一気に10冊ほどが出された。「田中角栄 100の言葉」のほかに、「丸山眞男と田中角栄『戦後民主主義』の逆襲」(集英社新書)、「田中角栄突破する力」(英和出版社)……。そして、今年も1月に作家で元東京都知事の石原慎太郎氏(83)による「天才」(幻冬舎)が出版され、「田中角栄 巨魁伝」(朝日文庫)、「田中角栄 魂の言葉88」(知的生きかた文庫)と続く。