英国の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まったことを受け、日本政府内からは「アジアの安全保障への影響が出ないと思っている人はいない」(高官)など、安保環境の変化を懸念する声が出ている。背景には、沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域に軍艦を進入させるなど、海洋進出を強化する中国と英国が距離を縮めるのではという警戒感がある。
岸田文雄外相は24日、「日英両国は基本的価値を共有し、政治、経済、安全保障などで協力関係にあり、引き続き関係の維持・強化に努めていく」との談話を発表、日英関係に問題は生じないとの認識を強調した。一方で、杉山晋輔外務事務次官を急きょ29、30日にブリュッセルとロンドンに派遣し、EUや英国関係者と意見交換するよう指示した。
英国は昨年3月、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、主要7カ国(G7)で初めて参加する方針を示した。それだけに日本は、英中の接近に神経をとがらせている。
EUは前身であるEC(欧州共同体)時代の1989年に起きた天安門事件を機に、中国への武器輸出を禁止している。だが、ある政府関係者は「EUから離脱した英国が輸出を解禁する可能性もある」と話す。