手作りのおにぎりを選手に渡すマネジャーの安藤明里(右)=横浜市磯子区岡村2丁目の横浜学園
球児の間で近年、たくさん食べて体重を増やす「食事トレーニング」が広がっている。パワーが増し、打球の飛距離や球速の向上につながると考えられている。
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2000年創部の横浜学園(神奈川)は、夏の県大会で2回戦を突破したことがない。マネジャーの安藤明里(2年)は昨夏の大会後、矢泙(やなぎ)友紀監督から「強いチームと決定的に違うのは、体。体を大きくするのは、どんな弱小校でもできる」と言われ、食トレ担当になった。
毎日、20合炊きの業務用炊飯器を使って、部室で米を炊く。冬場も野外の水道で米をといだ。練習の終了時間に合わせ、炊きたての米で20人分のおにぎりを用意。「選手の顔を思い浮かべ、体が小さい選手には少し大きめのおにぎりを作る」と話す。
土日の昼食には32合の米を炊いて、どんぶりによそう。身長から体重を引いた数値が111以上の選手には800グラム、106~110で700グラム、101~105で600グラム、100以下で500グラム。監督の指示を受け、しっかり量って選手に渡す。
全国の強豪校では、成人男性が1日に必要とされるカロリーの倍を超える5千から7千キロカロリーを摂取していることも知った。さらに間食にバナナなどを取り入れられないか、監督に相談している。
食トレを始めた当初、たくさんの量を食べることに慣れない選手からは不満の声が上がった。「少し減らして」と言われたこともあったが、おにぎりを包んだラップを回収し、きちんと食べているかどうかの確認をした。
2、3年生の平均体重は、61・6キロから72・4キロに大幅増。例年、チーム合計3本程度だった本塁打数は、15本を超えた。今年5月にあった練習試合では、1試合で3本塁打を記録。安藤は「選手本人の努力があってこそだけど、少しはお手伝いができているかな」。
今では選手から「おにぎりまだ?」と催促されるようにもなった。加賀裕大主将(3年)は「毎日おいしいおにぎりを作ってくれてありがたい」と話す。
悲願の2回戦突破を目指す夏の大会が迫る。一回り大きくなった選手たちに囲まれて、安藤は「思い切りスイングしてほしい」と願う。いつもは市販の混ぜ込みご飯のもとを使うおにぎりだが、大会前には焼き鳥などを入れた少し豪華なものを用意することにしている。=敬称略
■バテない体づくりにも
ソフトバンクの和田毅投手らの食事サポートをしてきた食品メーカー「明治」の管理栄養士、奈良典子さんによると、ハードなトレーニングを積む球児は、1日に3千キロカロリー以上が必要。練習についていくためのスタミナをつけ、バテない体を作るためにも食トレは効果があるという。練習後30分以内に白米などの糖質を多くとることで、疲労回復効果が期待できる。糖質とともに、たんぱく質やミネラルなどをバランス良く補給し、十分な睡眠をとることも重要という。
やみくもに食事量を増やすと、調子を崩すこともあると警告する専門家もいて、注意が必要だ。