ヘッドマウントを装着して、海中探検のデモを体験する来場者ら。シートが上下左右に動き、風やミストなどの特殊効果で雰囲気を盛り上げる=6月22日、東京都江東区有明3丁目の東京ビッグサイト、竹谷俊之撮影
まるで現実世界にいるような映像が楽しめるVR(仮想現実)の活用が広がってきた。先行するゲームやエンタメに加えて、住宅選びや自動車メーカーの製造現場など幅広い業種に使われ始めている。一方、映像で気分が悪くなる「VR酔い」などの課題もある。
6月末、東京ビッグサイトで最新のVRコンテンツや端末を集めた展示会があった。数あるブースの中でも来場者を多く集めていたのがダイナモアミューズメント(東京)。ウリは、「動くシート」と組み合わせたVRコンテンツだ。
映画館にあるようなシートに座り、ゴーグル型の端末を頭に装着すると、水中の映像が目の前に広がる。巨大なサメに襲われたり、急に速度が上がったりと映像の内容や動きに合わせてシートが前後、上下、左右に振動する。担当者は「VR映像に体の動きを加えることで、より臨場感が高まる」と話す。
今年は、米フェイスブック傘下のオキュラスと、台湾HTCが相次いでVR端末を発売。ソニーも10月に発売を予定しており、ゲームメーカーは競うようにソフトを開発している。アダルト分野でも試作品が作られており、開発者らを集めたイベントが開かれるなど、ゲームと同様に注目が高まっている。
そうした中、不動産業や観光業は、その場に行かなくても、同じような体験ができるVRの利点に目をつけた。
アートクラフト(東京)は、実際に室内を撮影した動画を使った「バーチャルモデルルーム」を制作。実際に物件を見に行かなくても、VR端末を使えば、まるでそこにいるかのように室内を歩き回り、間取りを確認することができる。
トヨタ自動車では、作業の効率性向上や負荷軽減にVRが貢献している。VR端末を装着した作業員に、自動車の映像を見ながら、実際の作業と同じ動作をしてもらう。カメラで人の動きを立体的に読み取って映像に反映させるモーションキャプチャーを使い、動作をコンピューター上に再現し、作業の改善点を探る。ラティス・テクノロジー(東京)の技術を使った。
ただ、メリットだけではない。VR端末を長時間装着したり、映像の質が悪かったりすることで、気分が悪くなる「VR酔い」が起きることがある。ネット監視業務のイー・ガーディアンは開発中のVRコンテンツを対象に、性別や年齢、ゲーム習熟度などの違いで起きる酔いやすさを調べるサービスを6月末から始めた。
イベントなどで、不特定多数の人が同じVR端末を使い回す際の衛生面も、利用拡大に向けた課題の一つだ。展示会出展企業の担当者は「アイマスクを用意したり、顔に接する部分を清潔に保ったりして対応しなければならない」と話す。(篠健一郎)