絶えず発展するインターネットの時代とともに、中国の若者の消費スタイルにも絶えず変化が生まれている。彼らの消費行動もますます複雑化し、万華鏡のような多彩なシーンが見られるようになった。若者のお金に対する態度は広く社会の注目を集めている。それでは若者はお金について、一体どのように考えているのだろうか。
「ケチ」がトレンドに
経済社会が急速に発展し、個人の収入も年々増加しているが、消費水準も上がり続けている。社会人になって間もない若者は、毎月もらえる給与が少ないため、生活費を除くと後にはほとんど残らない。小さい頃から親の世代よりも早くお金について考えていた若者は、彼ら独自の「秘密のカギ」をすぐに見つけた。
100秒以上ある広告を見ることを我慢してでも、動画配信の有料会員には絶対にならない。ネットショッピングで送料込み100元(1元は約16.4円)の買い物はためらわずにするが、価格90元で送料10元の商品は絶対に買わない。レストランで数百元の食事をしてもなんとも思わないが、2元のティッシュペーパーは高いと思う。夏にはエアコンを使わず扇風機だけにし、外出時は徒歩か自転車に乗る。一ヶ月あたりの食費を500元に抑える。こうした「ケチケチ作戦」がその「カギ」だ。人々が80後(1980年代生まれ)や90後(1990年代生まれ)に対して抱く「月光族(毎月の給料をその月にすべて使い果たす人)」や「親のすねかじり」といったこれまでの固定的なイメージと異なり、今やますます多くの若者が衣食住・交通の各方面で細かく計算するようになっている。
若者はケチをテーマにして友達を作り、ケチの技を披露し合って交流し、「ケチ」を共有して心から楽しく語り合い、「ケチ」に果てしない興味を感じる。さまざまな節約の極意を生み出す人もおり、「買い物するときはコストを分析して同類製品と比較検討することが必要。専門店で欲しいと思う商品があれば、OEM(相手先ブランド名製造)先のオンラインショップで直接購入する」、「ミルクティやおやつはお金を浪費するし太ると自分に言い聞かせて、消費への欲望を抑えている」、「お金を貯めて任天堂のゲーム機を買うために、1ヶ月の生活費を数百元に抑えている」などがその一端だ。
お金は使うが無駄な使い方はしない
今の若者の消費観は、実際のところ、より冷静で理性的になっている。特に2020年初めに発生した新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの若者が貯金と理性的な消費の重要性を認識するようになった。若者は消費にあたって、「生活必需品しか購入しない」人が55.8%に上り、「少なめに買い、よいものを買う」が40.2%、「購入の決断が以前よりも慎重になった」が39.6%だった。
若者の消費観と消費スタイル、消費の注目点など10の角度から分析を行ったところ、若者の支出項目のトップ3は教育研修(32.44%)、住居関連(31.53%)、ヘルスケア(26.11%)だった。このほかに挙がった項目には旅行、文化・娯楽、保険などがあった。
自分には気前よく
米マッキンゼー・アンド・カンパニーの「中国ぜいたく品報告2019」によると、18年には、中国のぜいたく品消費のうち90後の占める割合が23%を占めていた。また90後のぜいたく品購入額は一人あたり平均2万5千元に達し、親世代と肩を並べた。米ベイン・アンド・カンパニーが20年に発表したデータでは、若者層が初めてぜいたく品を購入した年齢の平均は20歳だった。
中国社会科学院社会学研究所の朱迪研究員の分析では、「今の若者がより重きを置くのは『今を大切にする』ことで、『将来への備え』ではない。若者は自分が欲しいものは何か、自分が好きなものは何かを知っている。これは上の世代が一般的に『私は何が買えるか』に関心を寄せていたのとは異なる。業者とマーケティング、それらが構築した消費文化の影響により、若者は消費への欲望が絶えずかき立てられてもいる」という。
稼ぎながら消費を楽しむ
若者は親の世代に比べ、苦労して「お金を貯めてから消費を楽しむ」ことにはあまり興味を感じない。それに代わるのが、「稼ぎながら消費を楽しむ」という生活の態度だ。
お金を稼ぐ動機として、具体的で長期的な目標を設定する若者は少数派で、その多くは最近になって購買意欲を植え付けられた、すぐに実現できる「小さな目標」に向かう。若者は一般的に未来のリスクへの不安度が高く、上の世代に比べて安全感を感じにくいが、上の世代のように絶えずお金を稼ぐことで不安を解消しようとはしない。反対に安定して稼げるという前提の下で十分な計画を立て、明日のことは明日心配するという態度を取る。
朱さんは、「上の数世代がお金を稼ぐのは主に『生きるため』で、たとえば家を買う、子どもを学校にやる、いざというときのために備えるなどだった。お金を貯めるためにお金を稼ぐという人もいた。しかし今の若者は、お金を稼ぐのは生きるためであり、お金を稼ぐために生きるのではないと考える人が増えている。こうして若者はますます『小確幸(小さいけれども、確かな幸福)』がある暮らしを選び、追い求めるようになった」と分析した。
「お金を稼ぐために生きる」から「生きるためにお金を稼ぐ」へ、言葉が入れ替わっただけのようだが、ここには若者の金銭観の転換が反映されている。蓄積を重視していたのが享受することを知るようになり、「稼いでから消費を楽しむ」から「稼ぎながら消費を楽しむ」へと転換した。
多様化した資産運用を受け入れる
上海高金金融研究院が発表した「中国人資産運用トレンド報告2020」によると、資産運用を行う中国人は若年化の傾向が顕著で、90後が主力層になりつつある。またオンライン資産運用を選ぶ若者がますます増えているという。第一財経ビジネスデータセンター(CBNData)が発表した「オンライン資産運用利用者報告2019」によると、90後とより若い95後(1995年から1999年生まれ)、00後(2000年代生まれ)がオンライン資産運用利用者の49%を占めたという。
資産運用商品を購入するだけでなく、若者にとっては貯金も安定的な資産運用の選択肢だ。
一方で、高リスク・高リターンの投資を始める若者もいる。一部の若者の目から見ると、リスクは成長するために避けて通ることのできない道であり、なんとしても回避しなければならないものではないという。
90後を代表とする若者はお金についてより明確な計画をもつ。上の世代が預金と不動産購入をよく選択していたのに比べ、若者にはさらに多くの選択肢があり、株に投資することも、ファンドや保険を買うこともできる。北京大学光華管理学院の符国群教授は、「現在の若者が資産運用に関して蓄えている知識は、上の世代よりもずっと豊富だ。若者は新しい資産運用方法をよりよく学び、より迅速に受け入れる」と述べた。
社会への還元は惜しまない
お金を使うということは、よりよい物質的な暮らしを享受するということだけではない。個人の精神的なニーズを満たしたり、社会的価値を実現したりすることも、若者が自分自身を喜ばせ、積極的に自分のお金を出す重要な動機になる。
劉さんは2012年7月から、携帯電話の通話料を月決めにする方法で赤十字に寄付をしている。「社会貢献として自分ができるささやかなことをして、達成感を得られる」と言い、着なくなった衣類を必要としている人に送ることもしているという。若者は自分に対して気前がよいだけでなく、社会貢献事業にも開放的で気前良い態度を取る。
前出の朱さんは、「サービス消費の増加はより成熟した消費社会の目印だ。サービス消費の特徴は、便利で快適な暮らしの提供と、面白くて斬新な体験の提供にあり、若者の消費観念やライフスタイルに合致する。物質的な所有の有無を強調するのではなく、サービスの購入によって消費欲求を満たすことをより受け入れている点に、若者の物質に対する見方の変化が反映され、社会の発展トレンドがよく現れている」と説明した。(人民網日本語版論説員)
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「人民網日本語版」2021年2月24日