車中泊4日目。9歳と3歳の子どもにも疲れが見え始めていた=4月18日、熊本県菊陽町、中野志乃さん撮影
車中泊、コンビニの空っぽの棚、握り飯――。市民の目で熊本地震をとらえた写真を、大災害の記録として残す「市民アーカイブ」の取り組みが、始まっている。東日本大震災を経験した仙台市の団体が発案し、ツイッターやLINE(ライン)などにアップした写真の提供を募っている。
特集:熊本地震
「くまもと震災アーカイブ」のフェイスブックは本震3日後、4月19日に立ち上がった。仙台で「3・11オモイデアーカイブ」を主宰する佐藤正実さん(52)と、熊本県芦北町で地域活性化のNPOを運営する藤井ゆみさん(51)が中心だ。
5年前の東日本大震災の時、ツイッター上では安否確認や近所の様子、給水の場所など、ごく身近な情報が次々につぶやかれていた。スマホや携帯の写真を添えたものも多かった。
自身も被災した佐藤さんは、約2週間後、ツイッターで画像の提供を呼びかけた。あのとき市民が何を考え、どう行動し、どんな生活を送ったか。報道写真とは異なる視点での、貴重な資料になると考えた。これまで3万5千枚が集まり、本にもなった。
熊本地震でも多くの人が写真を撮っていた。
熊本県合志市の中野志乃さん(40)は、本震後の9日間、車で寝泊まりした。2人の子どもは余震におびえ、食欲がなかったり、暴れ出したり。これからどうなるのか。不安だらけの中で、目につくものを片っ端からスマホで撮り、心を落ち着かせていた。道ばたの花、夕焼け空、子どもたちの様子……。
福岡市職員の赤尾由雅(ゆか)さん(34)は市の仕事で、福岡に集まる救援物資の発送に携わった。「息の長い支援が必要だ」との思いを込め、倉庫に積まれた段ボールの写真を投稿した。「こうした記録を残すことが、被災した人の心のよりどころにもなる」と話した。
8月20日には、写真を見ながら市民が語り合う催しを、熊本市内で開く。一人一人が「あの時は怖かった」「自分の所はこうだった」と経験に引き寄せて語ることが、「忘れない」ことにつながる。アーカイブの佐藤さんたちは、そう考えている。
画像の提供は、撮影者名(ハンドルネーム可)、撮影場所、日時を添えてメール(info@sendai-city.net)で。(石橋英昭)