千葉県館山市で起きた殺人事件で、被告として法廷に立ったのは地区の区長を務めていた農業の男(76)だった。先祖伝来の田畑を堅実に守る人生を送ってきた被告が、一線を越えた理由とは。
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5月23日、千葉地裁802号法廷で開かれた裁判員裁判の初公判。ジャージー姿で入廷した被告は裁判長に認否を問われた。
裁判長「今読み上げられた内容に間違いありませんか」
被告「間違いありません」
起訴内容は、被告は昨年11月6日、近くに住む男性(当時73)の頭などを数回蹴って首などに傷害を負わせた後、池に落とし殺害したというもの。
冒頭陳述などから事件をたどる。
被告は、館山市内の先祖代々の農家の6人きょうだいの末っ子に生まれた。親の後をついで農業を営む傍ら、地区の防犯委員や農業組合員、水利組合員なども務めた。
被害者の男性が近くに引っ越してきたのは、約40年前。男性は土地を借り、建設会社を始めた。2人の間にトラブルが起き始めたのは約20年前のことだ。男性は被告に対し、「生活排水が敷地内に流れてくる」とたびたび苦情を言うようになった。
被告の家と男性宅は休耕地を挟…