村は面積の97%が山林。川沿いに集落が散在する=和歌山県北山村、東孝司撮影
三重県と奈良県に囲まれ、全国唯一の「飛び地の村」である和歌山県北山村で12日、村長選が告示された。新顔2氏が立候補を届け出て、48年ぶりに選挙戦になった。過去、11回連続で無投票が続いたが、「村を変えたい」と移住者が立ち、「小さな村に争いは好ましくない」としてきた慣習が途切れた形だ。
村は紀伊山地の山あいにあり、熊野川の支流・北山川沿いに集落が点在する。有権者は412人。コンビニは一つで信号付き交差点はない。観光筏(いかだ)下りや果汁豊富な特産かんきつ類「ジャバラ」で知られ、人口減対策や観光・農林業振興などが争点になりそうだ。
「平成の大合併」でも三重県熊野市や和歌山県新宮市などとの合併を選ばず、単独村政を貫いた奥田貢氏(74)=4期目=が先月、体調を理由に勇退を発表。同じ日に、元村職員で村議を務めてきた山口賢二氏(66)が立候補の意思を表明した。「意欲はずっとあったが、今回、村長がひいたので」と山口氏。「政策はおおむね継承する」と話し、村議会(定数6)代表と目される。
これに対し、7年前に大阪府から移住し、村議選にも2度挑んだ遊具自転車製造会社長の阪上博行氏(66)が「無投票を阻止したい」と今月10日に立候補の記者会見を開いた。「出る出ないを直前まで明らかにしたくなかった」と言う。
村長選では1972年以降、対立候補の名前が取りざたされても最終的には一本化されてきた。連続無投票11回は大分県姫島村の16回(継続中)、福岡県・旧宝珠山村の13回、愛媛県・旧一本松町などの12回に次ぐ。村職員や議会関係者らは「全員顔なじみ。もめ事は避けたい」「小さな村で信頼される人材は限られる」などと打ち明ける。
阪上氏は村内の公園前で第一声。「村民の意見が通る、村民のための行政にする」と訴えた。
山口氏は事務所前で出陣式。「歴代村長による安心できる行政を続けていく」と語った。(東孝司)