世界文化遺産に決まり、拍手する(前列左から)服部征夫・台東区長、宮田亮平・文化庁長官、馬渕明子・国立西洋美術館館長ら=17日午後5時15分、東京都台東区の区役所、嶋田達也撮影
東京・上野の「美の殿堂」、国立西洋美術館本館が、世界文化遺産に決まった。2009年、11年に続く3度目の挑戦で、トルコでのクーデター未遂という予想外の事態にも見舞われたが、ようやく世界に認められた。関係者らは喜びと安堵(あんど)、期待の思いに包まれた。
西洋美術館本館などが世界文化遺産に コルビュジエ作品
国内の世界遺産は20件目 西洋美術館などの登録決定
国立西洋美術館の地元、東京都台東区では17日、区役所に馬渕明子館長や宮田亮平・文化庁長官、服部征夫区長や区職員ら約60人が集まり、世界遺産委員会の審議の様子をインターネット中継で見守った。登録が決まった瞬間、会場は拍手と歓声に包まれた。
地元住民らがパブリックビューイングに集まった15日は審議に入らず、16日はトルコでのクーデター未遂で審議中止に。3日目となったこの日の午後5時14分、通訳の女性が「決議に入ります」と説明すると、「よしっ」という声が上がった。その直後、「採用されました」と登録が決まったことが告げられると、一斉に歓声が起こり、全員立ち上がって周囲の人たちと握手を繰り返した。
服部区長は「世界遺産登録を目指して10年、台東区の悲願でした。たいへんうれしい」とあいさつ。フランスのテロやクーデター未遂の犠牲者を悼む言葉に続いて、「西洋美術館を地域と一体となって大切に守り、継承するため全力で取り組む」と力を込めた。
馬渕館長は「決定を見届ける会」終了後の記者会見で開口一番、「やっと決まった」。今回の会議での登録決定は「無理かなと思っていた」といい、「決めていただき本当にうれしい。美術館の保存に責任を感じている」と語った。
西洋美術館と同じ上野公園内にある東京芸術大の教授や学長を務めた宮田長官は、記者会見で、コルビュジエが設計した西洋美術館について、「すばらしい教科書」と指摘し、「観光地として沸いていくと、教育と観光がつながる。うれしくてたまらない」と笑顔を見せた。(佐藤純)
■コルビュジエ「私は満足」
国立西洋美術館が生まれるきっかけは、「松方コレクション」の返還だった。
明治の元勲・松方正義の三男で…