スタンドで声援を送る生駒の山手勇一君=17日、奈良県橿原市の佐藤薬品スタジアム
22日の奈良大会3回戦に登場する生駒に、やり投げで4年後の東京パラリンピック出場を目指す野球部員がいる。身長134センチの山手勇一君(3年)。生まれつき軟骨が成長しにくい低身長症だ。「野球があったから、新しい次の夢が見つかった」と言う。
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小学生の頃から野球をしていた山手君は高校でも野球部に入ったが、体格差は大きくなる一方。ランニングでも遅れるように。次の練習メニューを待ってくれる仲間に申し訳なかった。「頑張れ」と声をかけられるのも重圧だった。
それでも、休み時間や昼食のとき、部員らと野球の話で盛り上がれるのはうれしかった。必死で練習についていった。
2年になり、控え組の練習試合に二塁手として出場した。体が小さく足も遅いため守備範囲は広くない。打球の方向を予測して大胆に守備位置を変えるようにした。北野定雄監督(57)は「黙々と練習に打ち込む努力家」と評する。
やり投げとの出会いは今年1月。野球部トレーナーが日本パラ陸上競技連盟の関係者と知り合い、その紹介で障害者陸上競技の練習会に参加。約2メートルのやりを思い切り投げた。20メートル以上飛んだ。「飛ぶなあ」と練習会の講師に驚かれた。
うれしくて、野球の練習後にやり投げの練習をするようになった。4月末、低身長クラスの代表選手選考会に出た。日本新の26・37メートルを記録。リオデジャネイロ・パラリンピックの参加標準記録A(32メートル)には及ばなかったが、「4年後の東京パラリンピックを目指したい」。
筋トレやダッシュにも、それまで以上に真剣になった。仲間も変わった。疲れた表情を見せると、「そんなんで世界を狙えるんか」。筋トレ中に尻をたたかれることも。それがうれしい。主将の堤佑豪君(3年)は「勇一の表情が明るくなった。自信がついてきたように見える」。
17日、奈良県橿原市の佐藤薬品スタジアムであった初戦。山手君はスタンドで黄色いはちまきを締め、声をからして応援した。22日午後、古豪・郡山と対戦する。4年後、グラウンドでプレーするみんなのように、思い切り力を試したいと大学では陸上部に入るつもりだ。(菅原雄太)